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CiaOpera!

高橋薫子・向野由美子・笛田博昭
Vol.3 -
高橋薫子・向野由美子・笛田博昭

オペラ歌手の素顔とは。
『カプレーティ家とモンテッキ家』出演の3名に聞く。

9月に上演のオペラ『カプレーティ家とモンテッキ家』に同じチームとして出演する高橋薫子(ジュリエッタ)、向野由美子(ロメオ)、笛田博昭(テバルド)は、自らの歌を追求し、役を考察し、お互いに切磋琢磨しあいながら作品をつくりあげる。それは、まさに誰もがイメージするオペラ歌手の“オン“の姿。けれど一歩稽古場を出るや、オフの過ごし方は三者三様。頭にいつも音楽が流れている?年に1度はイタリアに行く?家には音を持ち込まない?温泉が好き?乗り物が嫌い?金魚を育てて大会に出る?また、舞台への考え方やスタンスも実は様々で、それぞれに悩みあり、苦しみあり。声に直接的な影響を及ぼすメンタル・コントロールの試行錯誤を乗り越えて、劇場で自分を解き放つ。

今最も旬なアーティストのリアルな声や、話題の公演に関する臨場感あるエピソードなど、オペラがもっと楽しめること請け合いの情報をお届けする新コーナー「CiaOpera!」。第三弾は、9月に上演のオペラ『カプレーティ家とモンテッキ家』に出演する高橋薫子氏、向野由美子氏、笛田博昭氏の3名に、作品への想いのみならず、オフの日の過ごし方などについて貴重なお話を伺いました。

カギは、役づくり。シェイクスピアとはひと味違う「ロメオとジュリエット」。

—今日は、9月に上演される『カプレーティ家とモンテッキ家』に出演のお三方にお越し頂きました。ジュリエッタ役を務める高橋薫子さん、ロメオ役の向野由美子さん、テバルド役の笛田博昭さんです。さっそくですが、この演目、知らない人がタイトルを見ると「なんだろう?」という感じを受けそうですが、いわゆる『ロメオとジュリエット』なんですよね。あまりにも世界的な恋愛悲劇ですし、何よりシェイクスピアが演劇の脚本として書き起したことが有名ですね。映画や舞台、もちろん音楽作品もたくさん存在するわけですが、このベッリーニ作曲のオペラならではの特長があれば教えてください。

高橋)この作品は、リブレット(台本)自体はいわゆるシェイクスピアではなくて、もともと古くからあった伝承みたいな話をロマーニという人が台本にしたので、お話は確かに『ロメオとジュリエット』なんだけど、それだけではなくて「家」と「家」の話というか。

笛田)そっちの方が強いかもしれないですね。

高橋)そうなんですよ。「家」と「家」の確執みたいなものの中に、ロメオとジュリエットの話がついてきているという感じですね。私、グノー(作曲のオペラ)の『ロメオとジュリエット』をやったこともあって、その作品は台本自体もシェイクスピアのものだったので、いわゆる”バルコニーシーン”とかロマンチックなところもあったんですけど。(ベッリーニの作品は)そういうのがあまりなくて、そういうの(バルコニーシーン)を通り越したところの、家同士の確執のなかの人物、というところがありますね。

—確かに、かなり話が進んだところから始まりますね。「2人が出会って…」というより、すでに恋人同士という。

向野)まさに、タイトルに表れているという気がします。「カプレーティ家」と「モンテッキ家」という。

笛田)その通りだなぁ(笑)。僕も、さっき話に出たグノーの作品を1回やったことがあるんですよ。あれとはずいぶん雰囲気が違うな、という気がします。

高橋)ジュリエッタを演じていても、「恋愛もの」っていう気があまりしなくて(笑)。

—なるほど、よく知られたお話とは少しイメージが違うんですね。そんな『カプレーティ家とモンテッキ家』、本番まであと1ヶ月弱ですが、稽古の様子はどうですか?

(このインタビューは立ち稽古開始2日後に行われました。)

高橋)今は立ち稽古(実際に立ち動き、演技などをつけていく稽古)に入って、ある程度の動きはほぼ最後までついたんですが、歌い手たちに投げられている部分がすごく多いです。自由にもできるけど、役をふくらませる時間を自分のなかでつくらないと。音楽自体もスタイリッシュなものだから、ヴェリズモ(音楽による感情表現が重視され、重厚なオーケストレーションが特徴のオペラのジャンル)みたいに音楽自体がお話の世界にすごく連れて行ってくれるというわけでもないので、自分たちの中からどれだけファンタジーを出せるかっていうことがすごく大事かと思いますけど、まだ…

笛田)まだ探り中です。

—役づくりをされることが結構重要ということでしょうか?

高橋)つくるっていうのか、だんだん役にはまっていくのか。すごく真面目に事前に自分の中で考えてからやる人もいるし、稽古の流れの中からだんだん生まれてくる人もいるんじゃないかと思います。

—シェイクスピア作品にイメージが引っ張られている部分もあるかもしれませんが、ロメオやジュリエットに至っては14歳とか15歳ですよね。みなさんの役づくりは、どちらの方法ですか?

向野)年齢のギャップっていうのは、正直そもそも埋められないものなので(笑)。もちろん、今の年齢がそのまま出ないようにしようとは思いますけど、稽古をやっていくうちに、音楽とか周りの環境とか色々なことが助けてくれて、だんだんと役の年齢に近いエネルギーみたいなもの、それからロメオは性別も違いますけど、そういうものが出てくるので、最初から「16歳!」っていう気負いはほぼ無いです。もう「しょうがない!」という感じです。

—ジュリエッタの場合はどうですか?

高橋)私もそうですね。基本的に精神年齢は若いほうなので(笑)、肉体年齢との闘いはもちろんあるんだけれども、精神的なことですごく苦労したっていうのは…(フンパーディングのオペラ)『ヘンゼルとグレーテル』をやったときのように3歳、4歳とか、あれはやっぱり肉体的にもしんどかったですけど。娘役っていうのは、おそらく女王役とかよりも、もしかしたら楽かもしれない。あとは、本当にそれらしく見えるかどうかっていうフィジカルな問題は次の段階で、精神的な気負いはそんなに無いですね。

—テバルドはいかがですか?

笛田)もちろん何かしらのイメージとかは持ってるんだけど、家にこもって「僕はこういう役でいこう」とかそういうのは無いかな。やっぱり現場に行ってみると色々な周りの状況もあるから、そういう中でつくり上げていくっていうか。特に僕は今回、ベルカント(美声・声量・装飾・表現力など、高度な声楽的技術を求められる歌唱法)ものが初めてだからね。

—普段はどんな作品に取り組まれることが多いのですか?

笛田)そうですね、イタリアだけどもう少し新しいもの、ベッリーニよりも時代的に今に近いものですね。ヴェリズモものという、プッチーニの作品とか、ヴェルディの後期の作品が多いんですよね。そうすると、さっき薫子さんが言われたみたいにオーケストラが音楽でドラマをつくってくれて、その中でちゃんと歌えばいいというか。今作が難しいのは、オーケストラがシンプルだから、その中で歌い手の技量が本当に試される。言葉ははっきり歌うんだけどレガート(流れるように)にしなきゃいけないし、強弱もあるし、ちゃんと表現するところはしないといけない。それが、今回やってみて、ヴェリズモ・オペラとすごく違うところだと思っています。

高橋)種目が違う感じですよね。

笛田)そうそう、そういう感じ!

—今回、みなさん同じ組(9月10日キャスト)になってみて、お互いの印象などはいかがですか?

笛田)僕は、おふたりが優しくて心が広いから、すごくやりやすいです。

高橋)笛田さんみたいな人がいると安心するよね。

向野)そうそう、動じない人というか。

—すでに信頼感バッチリという感じですね!役としては、お互いに関わりはありますか?もちろんロメオとジュリエッタはあると思いますが。

高橋)ジュリエッタとテバルドはほとんどないですけど、ロメオとテバルドは結構ありますね。重唱もあるし。

—ロメオとテバルド、恋のライバルとしてお互いの掛け合いの感じはいかがですか?

向野)笛田さんのテバルドだと、本当にジュリエッタがさらわれてしまいそうな気がしてしまうんです。客観的に見ていて、「このテバルドだと、ジュリエッタなびいちゃいそうだな、かっこいい〜!」って思って、見ちゃうんです。

高橋)強そうだしね(笑)。

カプレーティ家とモンテッキ家キャスト高橋薫子・向野由美子・笛田博昭

向野)そう(笑)。なかなか普段そういうことはないんですが。「これ、(ジュリエッタは)テバルドのところには行かないでしょ」っていうのがほとんどなんですが、笛田さんだと「これはやばい、本当にテバルドに気持ちが揺らぐんじゃないか?」と思うので、これからの私のテーマとしては、本気でジュリエッタを取られないようにしないといけないな、というところです!

—役として火がついてますね!お互いに引き出しあって、信頼関係を持ちながら稽古が進んでいそうですね。演出家の方や指揮者の方とはいかがですか?

笛田)僕は、本当に初めてだから分からないところが多いんです。マエストロの山下一史さんも初めての方だし。『蝶々夫人』のとき松本重孝さんはご一緒しましたけど。重孝さんの演出のやり方って、さっき薫子さんもおっしゃいましたけど、歌手の側がつくってつくって、ちゃんとして行かないと成り立たないんです。

高橋)埋まらないんですよね。「ここから出て、こうする」みたいな段取りは与えてくれるんですけど。

笛田)いつもああいうスタンスなんですか?

高橋)そうですね。

向野)私、昨日の稽古で「ここから出て、そこにはける。はい、やってみよう」って言われたとき、思わず「はい!」って返事しちゃったんです。うっかり言っちゃうと危険なんです(笑)。自分でちゃんと流れを分かって、すべて埋めていかないと、ラインしか与えられないので。

—それが、最初に高橋さんが言われていた「自分で考える時間が必要になってくる」ということなんですね。

笛田)それが重孝さんの狙いなんでしょうね。

高橋)音楽稽古の時にいらして「こういう感じ」っていうアドバイスを言ってくれたりはしますが。でも、動きとして特別奇抜なことをするってことはないじゃないですか。役としても、突飛なことが起こるわけでもないし。だから、音楽自体でどこまで役に迫れるかで本当に変わってくると思うんです。やっぱり音楽に隙があったら、いくらきれいに動いたって決まらないので、そこのところを(これから)なんとかせねばな、という感じですね。

—稽古は、もうひとチーム(9月11日組)と一緒にやっているのですか?

高橋)はい、一緒にやっています。来週から組分けになりますけどね。

—同じ役の人から、影響を受けることはありますか?

高橋)やっぱり「いい動きしてるな」と思ったら参考にしたりしますね。

笛田)そういうやり方もいいなぁ、なんて思ったりするよね。

向野)ただ、あんまりそのまま取り入れるのもね(笑)。ちょっとアレンジしたりはするかも(笑)。

—なるほど。これから稽古はどんどん追い込みに入るのですね。どんな舞台になるのか楽しみです。

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