アーティスト インタビュー

押川 浩士

知ってほしい。オペラがこんなに分かりやすくて、楽しいことを。

Vol.10

数あるオペラのなかでも、いちばん好きな『セビリャの理髪師』の「フィガロ」。どんな風に考えるか?どんな行動をとるか?フィガロという人物を深く見つめて、演じきりたい。『セビリャの理髪師』は、出演者の超絶技巧のアリアも、「ロッシーニ・クレッシェンド」の重唱も素晴らしく、何よりもストーリーが分かりやすい。見終わったあとに幸せになれるオペラ。「敷居が高い」と思われがちなオペラが、実はとても親しみやすく楽しいものであるということを、多くの人に知ってほしい。だから、24時間オペラ歌手といえるほど精力的に活動している。

今最も旬なアーティストのリアルな声や、話題の公演に関する臨場感あるエピソードなど、オペラがもっと楽しめること請け合いの情報をお届けする新コーナー「CiaOpera!」。第十弾は、前回に引き続きテアトロ・ジーリオ・ショウワで上演のオペラ『セビリャの理髪師』にて、4/30(日)にフィガロ役を務める押川浩士氏に、作品や役への意気込み、共演者について、見どころについて、精力的な音楽活動についてお話いただきました。

数あるオペラのなかでいちばん好き!夢が叶った『セビリャの理髪師』。

ー今日は前回の谷さんに引き続き、『セビリャの理髪師』について、ダブルキャストで4/30(日)にフィガロを演じる押川さんにお話をお聞きしていきたいと思います。まず、「フィガロ」役にのぞむにあたっての意気込みをお話しいただけますか?

僕は、数あるオペラのなかでもこの『セビリャの理髪師』の「フィガロ」がいちばん好きなんですよ。僕が藤原歌劇団に入ったのは、学生時代についていた先生のご縁もありますが、とにかく学生時代からロッシーニ作品に関して当団が日本最高峰の歌劇団だと思っているんです。その環境で、自分がいちばん好きなフィガロをやりたい!と思ったのが、入団のきっかけのひとつだったんです。なので、今回はまさしく夢が叶って嬉しいです。

ー夢が叶ったのですね!フィガロ自体は、何度か演じられていますか?

はい、初めてではないですね。それこそ藤原歌劇団の研究生を出たあと、いちばん最初に演じたのがこの役でした。

ーそのときと、何か心境に変化はありますか?

フィガロは劇中で歌う部分も多いですし、いろんな技術が求められるのですごく難しくて、そのときはもう無我夢中でやっていて。気付いたら終わってた、というような感じだったので、今度はもっと余裕をもってのぞみたいなぁと思いますね。

ーご縁のある役なのですね。

そうかもしれませんね。前回、藤原歌劇団で『セビリャの理髪師』をやったときも、僕は出ているんです。そのときは、「フィオレッロ」というアルマヴィーヴァ伯爵の召使いの役。好きな作品だから、出演依頼のお話が来たときはやっぱりすごく嬉しくて。『セビリャの理髪師』の「フィ…」までは合っていたし、フィガロとね(笑)。「フィ……オレッロか!よし、でも頑張ろう!」ってね(笑)。

2011年 藤原歌劇団「セビリャの理髪師」フィオレッロ役(右)左はアントニーノ・シラグーザ

それから色々なオペラに出演させてもらって、今回に至ります。そういえば、今年2月の『カルメン』にも出ましたが、そのときハッと気がついたことがあるんです。前回の『セビリャの理髪師』に出て、『愛の妙薬』に出て、『ランスへの旅』に出て、『ドン・パスクワーレ』に出て…『カルメン』で初めてオペラ・セリア(悲劇)に出たんです。それまでずっと、オペラ・ブッファ(喜劇)が多かったんだなぁと思いました。喜劇、好きなんですよ!稽古をやっていても、稽古場の空気も楽しいですしね。

ーなるほど、稽古から楽しめるのですね!フィガロの人物像については、押川さんはどう捉えていらっしゃいますか?

とにかくよくしゃべる人、ですかね。まぁこの作品はよくしゃべる人がいっぱい登場しますけど。性格が、音楽にもすごく表現されていると思うんです。早口でしゃべる人もいるし、曲もジェットコースターみたいで。もう、オペラ・セリアとは譜面の模様が違うんです。それこそ本当にジェットコースターのように書いてあるかもしれない。高い音から低い音までダーッと並んでいたり、高速でワーッと歌うところがあったり。オペラ歌手って、結構白い音譜が好きなんですよ、「ア〜♪」と伸ばせるやつが。でもオペラ・ブッファは、白い音譜がすごく少ない。細かいオタマジャクシがいっぱいいて、「あぁ、どうしよう!」となります(笑)。

ー大変ですね(笑)。でも、これまではそういったスピード感のある作品への出演が多かったのですね。

そうですね、ジェットコースターにばっかり乗っています(笑)。歌もですけど、僕は演技をするのが好きなんですよ。たとえば、そこにフィガロという人物がいて、スペインのセビリャという町でずっと生活している。そういった、その人がどういう人生を辿ったかというのを自分が再現できるところに、やりがいを感じるんです。フィガロだったら、どういう風に考えて、どういう風に行動するか、と考える。オペラ歌手のいいところって、そこだと思います。自分とは違う人格を、2時間なり3時間なりのなかで体験できる。これは、普通だったらできない経験なので、本当に楽しいですね。

ー演じることを楽しんでいらっしゃるのですね。そして、そこに音楽が乗るという。

本当は、いちばん楽なのは立ったまま歌うことでしょうけど、それだとやっぱりつまらないと思うんです。歌って、動いて、演技して、お客さんに喜んでもらえる要素をフルに活かして、現実ではない出来事があたかも本当に起こったかのように再現できるというのが面白いですよね。

ー前回、もうひとチームの、同じフィガロを演じる谷さんにお話をうかがいました。『セビリャ〜』に限らず、違うチームでも同じ役をやる方同士で、役についての話はされるものなのでしょうか?

どうかなぁ、毎回するわけでもないけど、でもやっぱりお互いの歌や演技を見て「あ、こういう風に感じてやっているんだな」とか、「ここはいいな」「ここは、自分はこういう風に変えてみようかな」と思う部分はあると思います。

ー共演者のみなさんについては、どう感じていらっしゃいますか?

僕のチームはね、みんな、若いんですよ(笑)。僕も結構若いほうなはずなんだけど、もしかしてこの中ではだいぶ年上かもしれない。最近の若い人はすごいですね(笑)!

ー共演は初めてですか?

初めての方、多いですね。これから立ち稽古に入ってオペラをつくっていくなかで、みんなで一緒に色々と言いあいながらやれるといいですよね。29日チームはほら、スーパースター集団みたいになっているから、こちらも本気で燃えて、みんなで合宿でもしちゃおうか?!なんて言ったりして。30日チームは、とにかく若さの力で負けちゃいかん!と。若さを爆発させていきたいと思います。

ーフレッシュ・チームなのですね。指揮者の佐藤氏とはご一緒されたことはありますか?

マエストロも、こうして、オペラでちゃんとご一緒するのは初めてなんです。オペラでもなんでも、舞台って、いつも同じ人と一緒なのではなく、いろんな人がいろんな所から集まってひとつのものを創り上げていくものじゃないですか。そのなかで、お互いの技を高めあったり、作品について話したり、そんな過程がすごく楽しいです。

音楽は超絶技巧。ストーリーは分かりやすい。すべてが見どころの、幸せオペラ。

ー押川さんの考える、今回の『セビリャの理髪師』の聴きどころ・見どころはどこでしょう?

聴きどころはやっぱり、みなさんが歌で超絶技巧を駆使するところですね。それから、人物それぞれのアリア。アリアっていうのは名刺みたいなもので、それぞれ登場しながら自分のことを歌うので、その人がどんな人物かという部分がひとつひとつ表現されている。それからなんといってもフィナーレですね。なんか、ばかばかしいんだけど面白いんですよね。ひとりが何かを歌い始めたら、違う人がそこにどんどん加わって、短いフレーズを何回も何回も繰り返して、だんだん大きくなる。これが、よく「ロッシーニ・クレッシェンド」と呼ばれるものです。

ーフィナーレは、ロッシーニならではの音楽が聴けるのですね。

はい。それから、演出としてはやっぱりフィガロがバルトロのひげを剃るところなんかも面白い。当時の「理髪師」というのは、「町のなんでも屋」と歌われるとおり、色々なことをやるんですよ。髪はもちろん切るし、ひげも剃るし、おつかいもするし、ちょっとした怪我の治療というお医者さんみたいなこともやっていたんだそうです。僕もちょっと前に知ったんですけど、よく床屋さんの前に赤と青のくるくる回っているもの、あるでしょう?あれは「動脈と静脈」を表していたり、外科治療の「瀉血(しゃけつ)」を表しているんだそうですよ。当時の理髪師が外科医も兼ねていた名残なんですね。

ー本当に、なんでも屋だったのですね!そして、押川さんとしてはこの作品はすべてが見どころ、聴きどころなのですね。

そうなんですよ。いい曲が本当にいっぱいあって、どこをとっても面白い作品ですよね。個人的に好きなところは、これもいっぱいあるんですけど、なかでもバルトロがものすごく早口で歌うアリア。もうぺちゃくちゃぺちゃくちゃしゃべっていて、「よくしゃべるなぁ!」と思って見ていると、歌手はものすごい汗びっしょりになっているんです。それを「いやぁ、大変そうだなぁ!」と思いながら見ているのが、またいいんです(笑)。

ーなるほど(笑)。『セビリャの理髪師』は、初めてオペラを観るという方にもとっつきやすい演目ですよね。

はい、面白いですし、話も分かりやすいですからね。やっぱり長く残っている作品には理由があると思うんです。星の数ほどあるオペラのなかには、時代とともに消えてしまった作品もたくさんあるのですが、『セビリャ〜』にしても『カルメン』にしても、話も分かりやすいし、登場人物のキャラクターなんかも、本当によく描けていると思います。

ー本作のなかで、いちばんオススメのアリアはなんですか?

まぁ、いちばんはやっぱりフィガロの「私は町のなんでも屋」なんですけど(笑)、今回の演出は、オペラの最後にアルマヴィーヴァ伯爵が歌う、普段公演ではカットされることが多くてなかなか歌われる機会のないアリアをやるんですよ。

ー話は聞いたことがあります。噂のアリアが、入っているのですね!

はい。物語がずーっと進んできて最後の最後、もう本当にすごい超絶技巧の長大なアリアで魅せるんです。このアリアがあるっていうのは、今回の目玉中の目玉ですよ!登場人物も合唱もみんな舞台に出てきて、それぞれ自分の歌も終わって半ばプレッシャーから解放されているなかで、ひとり伯爵が最後まで働くんですよ(笑)。

ーそれは楽しみです(笑)!

そのあと、最後のハッピーエンドのフィナーレもいいですね。絵に描いたようなハッピーエンドで、あの曲を聴いたらもう、誰でも幸せになれる。そう、これは見終わったあとに、幸せな気持ちになれるオペラです!

24時間オペラ歌手として、クラシックの楽しさを多くの人に伝えたい。

ー最近みなさんにお聞きしている質問なのですが、押川さんは、普段どうやって過ごしているのですか?

僕は結構、24時間オペラ歌手なんです(笑)。実は前回の谷さんのインタビュー記事も読ませてもらったのですが、僕も谷さんと同じく、レオ・ヌッチが大好きでして。ヌッチという人の声も音楽づくりも好きなんですが、キャラクターを描き出すのがすごく上手なんです。自分が歌う人物が、どういう人生を歩んできたかというのをちゃんと表現する。本とかを読んで知ったことなんですけど、ヌッチは、若くて時間のある頃にすごく「人」について勉強したらしいんです。それを知って、僕も学生時代に立川の駅前の喫茶店に入って、駅から出てくる人やデパートに入っていく人たちをずっと観察していたんです。本当にいろんな人がいるんですよ。電車に乗っているときでも、よく見てみるとひと車両にだいたいひとりは「あのオペラのあの役にそっくりだな」なんて人がいたりして。

ーレオ・ヌッチの役づくりに影響を受けたのですね。

そうなんです。本当に、レオ・ヌッチは24時間、歌手としてのクオリティーを高めていたんだなぁ、と感銘を受けて。あとは、何をしてるかなぁ…僕もみんなに聞いてみたいです(笑)。僕は、休むのが苦手なんです。だから、なるべく休みがないようにしています。

ーずっとオペラや歌のことを考えてらっしゃるのですか?

はい。僕は、なんとかしてオペラやクラシック音楽を、分かりやすく、いろんな世代の人に広めたいと思っているんです。だから色々と活動していて、何にもないという日はあまりないですね。

ーオペラ出演以外にも、積極的に活動されているのですね。

はい。たとえば、イタリアに留学に行って、帰ってきた歌手は仕事がないことが多いんですよ。でも、僕はたまたまイタリアに行く前に新国立歌劇場のオーディションを受けていて、その演目というのが、「子どものためのオペラ」というものだったんです。そのときはワーグナーの『パルジファル』という作品を、子どもたちに分かりやすいように『パルジファルと不思議な聖杯』という作品にリメイクして上演する夏休みの企画だったんですけど、でもそれ以外に仕事があんまりなくて。けどそのとき、「子どもたちに音楽を広めるってすごくいいなぁ。」と思って、時間もあったので、試しに自分で絵を描いて「うたかみしばい」というのをやったんです。そしたらそれから、同じような“子どものための〜”みたいな仕事がたくさん来るようになったんですよ。

ー大好評だったのですね!

ありがたいことですね。オペラって「敷居が高い」と思われがちじゃないですか。でも全然そうじゃないってこと。『セビリャ〜』にしたって、「お金がほしい」とか「あの人が好き」みたいなことを考えている人がいっぱい出てきて、ばかばかしいようなこともいっぱい起こって、すごく面白いんだってことを伝えたくて。話も分かりやすいじゃないですか。だから、「分かりやすいシリーズ」という企画をやったりもして。あと、以前こちらのCiaOperaにも登場された、鳥木弥生さんというとても面白いメゾ・ソプラノの方と一緒に「多摩ジュニア・ミュージカル」というのを設立して、そこで地元の子どもたちにミュージカルを教えているんです。たまたま僕と鳥木さんの家が近いこともあって。あと他にも音楽家の方が近くに何人かいて、「こういうことをやりたい」と言ったらみんな協力してくれて、今は結構な大人数でやってるんですよ。

それから他に、地元で「歌の会」っていうのもやっていて。公民館などで開いているのですが、地元の方たちが結構集まってくれるので、昔の歌とかを一緒に歌うんですよ。でもオペラ歌手としてやっている会なので、毎回1曲はクラシックを歌うようにして、「オペラって楽しいですよ」ということを伝えると、昔の歌などが歌いたくて参加していたはずの皆様がオペラ公演にも来てくれるようになるんですよ。「これ、舞台で聴いてみたいわ。」「今度は何やるの?」って、僕を通してクラシック音楽に親しんでくれるんです。

ー“体験”は大切ですよね。

ええ、食わず嫌いと一緒ですよね。一回「あ、これ美味しい!」ということが分かったら、もう自分から来てくれるようになるんです。

ーでは、プライベートも含めて、クラシック音楽を広めるということをライフワークにされているんですね。

そうなりますね。

ー「多摩ジュニア・ミュージカル」の活動もそうですが、オペラ以外にミュージカルもお好きなのですか?

はい、ミュージカルもやるんですよ。これ何年も前から始めていて、いろんな作品をやらせていただきました。今大学で教えているのも、専門はもちろんクラシックの声楽なんですが、ご縁あってミュージカルも教えるようになったんです。それがあったから今度は子ども達にも教えることになって。そうやって、だんだん広がっていくんですよね。あとは、クロスオーバー(クラシックとポップスを融合させたジャンル)でも「The Clapps’(ザ・クラップス)」というグループで活動していて、ポップスも歌いますよ。
他に演奏会の企画と構成もするのですが、常に雑用ばかりですよ!パソコンをカチカチ動かして、字幕なんかも自分でつくってみたりして。以前、ドニゼッティ作曲の『リタ』という、登場人物が3人しか出てこない面白いオペラをやったことがあったのですが、その作品をどうしても日本語でやりたかったんです。それでだいぶ探したんですけど、日本語訳の楽譜がなくて。でもやっぱりやりたかったから、「日本語版『リタ』」というのを自分でつくったんです。なんかもう、なんでもつくればできる!という精神で。

ーなんでも日曜大工で自前でつくってしまう、ヨーロッパ人のようですね!

(笑)。でも、なんでもできると思ってやっていると、いくつかはやっぱり出来ないことが出てくるんです。でもそれは、必ず人が助けてくれる。ご縁ですね。他に演奏会の企画と構成もするのですが、常に雑用ばかりですよ!パソコンをカチカチ動かして、字幕なんかも自分でつくってみたりして。以前、ドニゼッティ作曲の『リタ』という、登場人物が3人しか出てこない面白いオペラをやったことがあったのですが、その作品をどうしても日本語でやりたかったんです。それでだいぶ探したんですけど、日本語訳の楽譜がなくて。でもやっぱりやりたかったから、「日本語版『リタ』」というのを自分でつくったんです。なんかもう、なんでもつくればできる!という精神で。

ーなるほど。お話をうかがってみると、確かに24時間オペラ歌手といえる日常でした!ありがとうございます。

聞いてみタイム♪ 前回インタビューの谷さんから押川さんへ「聞いてみたいこと」を預かっています。

ージャンルを問わず、いちばん好きな曲は何ですか?マイベストソングを教えてください。

これはもう、僕は1曲しかないです!「私は町のなんでも屋」、決定です!

ー迷わずおっしゃいましたね!

大好きです!いろんなジャンルのいろんな曲を歌いますけど、やっぱりオペラがいちばんいい。いちばん面白いです。そのオペラのなかにもいい曲はいっぱいあるし、いくつも挙げられるんですけど、いちばんと言われたら迷わずこれです。

ー色々歌われていても、やはりオペラに戻ってくるのですね。そして、4月の『セビリャの理髪師』では、押川さんのベストソングを聴けるわけですね!

そうですね(笑)。両日、聴いてみるといいですよ!

ー聴き比べですか!面白そうですね。

はい、同じ指揮者、同じオーケストラ、同じ演出でやりますけど、29日チームと30日チームでは、全然違うと思います。このフィガロという役、先ほど「よくしゃべる役」と言いましたけど、実は僕自身はプライベートではあまりしゃべらないほうなんです。

ーそうなんですか。谷さんは、「フィガロの性格は自分と共通する部分を感じる」とおっしゃっていましたが、押川さんは逆に自分とは少し違うタイプを演じるイメージですか?

うーん、僕、オンとオフで結構差があるんです。オンのときはすごくしゃべりますし、早口です。でも僕は聴き取れなくていいというか、2、3言聴き取れて、なんだか楽しい雰囲気が伝わればいいと思うんです。
オフでは、特に小さい頃は本当にしゃべらなくて。ご近所さんに、声が出ない子だと思われていたぐらいです。僕は3人兄弟の真ん中で、何か欲しいものがあると兄に伝えて、兄が「浩士があれ欲しいって言ってるよ。」なんて伝令をやってくれた。それぐらい徹底してしゃべらなかったんです。

ー驚きですね!何か、しゃべるようになったきっかけはあったのですか?

やっぱり音楽ですね。でもうちの実家は当時、宮崎の養豚家で、全然音楽のある家庭ではなかったんです。剣道の先生でもあった父に、だいぶ反対されました。高校でバンドをやるようになって、だんだん友達も広がって、しゃべることも増えて。でも音大に行くのだって、父を1年かけて説得しましたよ。今では応援してくれていますけどね。

ーそうだったのですね。谷さんとはまた違う、押川さんのフィガロが見られそうですね。ぜひ見比べて楽しみたいです。ありがとうございました。

取材・まとめ 眞木 茜

©︎Yoshinobu Fukaya

押川 浩士

バリトン/Baritone

藤原歌劇団 正団員

出身:宮崎県

国立音楽大学卒業、同大学大学院修了。
日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第22期生修了。2010〜11年イタリアに留学。宮本修、田島好一、牧野正人、C.メリチャーニの各氏に師事。
アレッツォ市のコンクール勝利者としてオペラ「ラ・ボエーム」のマルチェッロでイタリアデビューを果たす。藤原歌劇団には、09年宮崎市民文化ホール事業「藤原歌劇団オペラガラコンサート<愛の妙薬>ハイライト」のベルコーレを経て、11年「セビリャの理髪師」フィオレッロにて本公演デビュー。15年「ランスヘの旅」、17年「カルメン」に出演。新国立劇場には、11年こどものためのオペラ劇場「パルジファルとふしぎな聖杯」のアンフォルタスでデビュー。またオペラの他、「サウンド・オブ・ミュージック」トラップ大佐、「マイ・フェア・レディ」ヒギンズ教授、「美女と野獣」野獣などのミュージカルにも出演するなど幅広く活躍している。その他、「第九」や宗教曲など各地でのコンサートも活躍している。藤原歌劇団団員。洗足学園音楽大学非常勤講師。宮崎県出身。

公演依頼・出演依頼 Performance Requests
シェアする ポストする LINEで送る
インタビュー一覧を見る
WEBでチケットを購入 お電話でチケットを購入