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  7. Vol.27-森口賢二 2

CiaOpera!

日本語歌唱や初役の難しさを乗り越えて、かけがえのない本番をつくる。

—森口さんは、イタリアやフランス、ドイツなど、ヨーロッパのオペラもたくさん歌われている印象がありますが、ヨーロッパの作品に比べて日本オペラを歌う難しさというものは感じますか?

日本語を歌う難しさは、常々感じます!普段しゃべっている言語ではありますが、しゃべり声そのままではダメですし。ミュージカルのようにマイクを使うジャンルではないから、生の声で、ある程度の響きを持って出さなければいけない。イタリア語などのほうが、「ベルカント唱法」というのもあるように、大きな声で言葉を歌に乗せやすいとは感じます。ただそれは、勉強している年数がどうしても圧倒的に違うぶん、発語と歌唱の技術の融合がイタリア語ほどうまくいかないように感じる部分もあるのでしょう。でも、僕はオペラとして作品をつくるという意味では、外国語のオペラでも日本語のオペラでもやることは一緒だと思っています。もしくは逆に、ヨーロッパの言語でも、イタリア語にはイタリア語、フランス語にはフランス語、ドイツ語にはドイツ語など、どんな言語の作品でもそれぞれ違いはあると思います。だから、イタリアオペラだからどう、日本オペラだからどう、ということは本来ないはずだし、イタリア語を歌うときと同じような技術を使って、日本語の特性を失わないように一生懸命歌うのが、歌手の務めだと思います。でも自分ではやっているつもりでも判断するのはお客様なので、その歌唱を舞台に乗せるにあたって客観的に調整してくれるのがマエストロであり、演出家であり、共演する仲間なのでしょうね。

森口賢二

−なるほど。そのとおりですね。今回の共演者の方々は、みなさんご存知の方が多いですか?

全員知っています。僕の3月2日チームでいえば、みなさんよく知っているし、プロダクション全体でも、直接お話したことはないかもしれませんが、顔を拝見したことがあるという方もいらっしゃいますよ。静の坂口裕子さん、義経の中井亮一さん…あと、僕と絡みのある政子役の家田紀子さんや大姫役の楠野麻衣さんも。それから、頼朝の脇を固める側近たち、梶原景時役の持木弘さん、和田義盛役の松浦健さん、大江広元役の三浦克次さんはみなさん先輩です。こういうポジションにしっかりとした方がいてくださるだけで、さっきの居ずまいの話ではないですけど、場の空気が締まって、舞台が醸成されるのですよね。心強いことです。

森口賢二

2017年 日本オペラ協会公演「ミスター・シンデレラ」垣内教授役 左は楠野麻衣

−脇を固める方がベテランであればあるほど、世界観が生まれるのですね。

そうです。ただ、今回出演者はみんな初参加の初役ですからね。

—そうですね!この『静と義経』という演目、25年ぶりの再演ですね!初役というのは、やはり大変ですか?

初役は難しいですよ!特に今回は、1993年鎌倉芸術館での初演以来の再演ですからね。プロダクションのメンバーでは、前回を知っている人、少ないんじゃないかな。勉強しなきゃいけないこと、覚えなきゃいけないことは山ほどあります。しかもこれはオペラの特性ですけど、演出や音楽づくりの違いはあれど、基本的には音楽もストーリーも、毎回同じことをやるじゃないですか。そうなると、1回より2回、2回より3回と回数を重ねたほうが、上手になるのが普通ですよね。それと、たとえば演劇なんかとオペラが一番違うのは、おおよその“間”が決まっていることです。オペラはまったくもってフリーな間ということはほぼない。「ここに3小節ある、だったらこのあいだにこんなアクションができる」とか、「3拍しかないなかで表現できることはなにか」とか。そのアドバンテージは、初役の場合は稽古でしか得られない。しかも、それでも本当に“経験”と呼べるのは、100回の稽古より1回の本番。もちろん稽古場でも本番と同じことをやるのですが、1000人のお客様が見ているなかで本番にちゃんと乗るのとは大きな違いがあるし、そこで初めて身になることってたくさんあると思うのです。その経験を何回積んだかというのが、自分の宝になっていくのです。

−100回の稽古より1回の本番。説得力のある言葉ですね。初役の難しさがよくわかります。

ロールプレイングゲームみたいですよね。経験値を積んで、地図や使える武器も増えていって、レベルが上がって。オペラとしての経験値が高い人たちが集まってはいるけれど、今回の役は初役だから、またゼロからつくりなおす。そんなことの繰り返しです。一度しか歌ったことのない役もたくさんあります。『天守物語』の図書之助もしかり、去年の『ミスター・シンデレラ』も垣内教授もしかり。今回の頼朝役だって、もしかしたら一度きりかもしれない。

−オペラは、どうしても何度も上演することが難しい側面もありますしね。

そうです。オペラを1回上演だけでもとてもお金がかかりますし、歌手はスポーツ選手のようなもので、その1度に全身を使って歌い、姿勢を保ち、演技し、さらに始まる2時間ぐらい前から、メイクだの衣装だのと準備を始める。これでは、とても毎日何度もなんてできません。でも、だからこそ1回1回の本番というのは、かけがえのないものでもあるのですけどね。このハイテクな時代に、こんなアナログなことはないですよね。僕たちの仕事は、ロボットには代えられない、価値のあるものだと思います。

−オペラは、人間だからこそできる感性の仕事なのですね。だから、劇場に足を運んで、じかに触れることに意味があるのですね。

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