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  7. Vol.27-森口賢二 3

CiaOpera!

作品や役との出会い、子供と過ごす時間…今しかない。だから、やる。

—それにしても、様々な作品に取り組まれているなかで、それぞれの作品で気持ちの切り替えをするのは大変ではないですか?どのようにされているのですか?

もう、音が鳴ったら変わるんですよ。無理やりではなく、自然に変われる。そこが、オペラのいいところだと思います。

—そういうものですか!空気か何かが変わって、自然と気持ちに影響するのでしょうか?

そう!だから、オペラをつくる作曲家たちは、天才だと思う。今まで『フィガロの結婚』が鳴っていたとしても、そこにふと「誰も寝てはならぬ」の音楽が流れてきたら、フッと『トゥーランドット』の空気になる。本当に、すごいことですよ。

—ちなみに、いちばん好きなオペラというのは何ですか?

これは難しい質問ですね。僕は、そのとき関わっているオペラが、いちばん好きなオペラかな、と思うのです。最初はそれほどでもなくて、なんだったら「なんだか分かりづらいな」と思う場合すらある。でも、だんだんできてきて、最終段階ぐらいになってくると「あれ?これは面白いかも?」と、“いちばん好き”になるんですよ。

森口賢二

−役と一体化したな、と思う瞬間があるのですか?

役と一体化するというより、音楽と一体化するという感覚のほうが僕にとっては近いかもしれない。楽譜どおりにできるようになる、といったら語弊があるかもしれないけれど、天才的な作曲家たちが「こう歌ってほしい、こう演奏してほしい」という思いで書いてくれた楽譜から読み取った“真の姿”に、マエストロも含めて自分流にアレンジを加え、「こんな感じでいいのではないか?」と思えるようなものができてくる。そんなとき、初めて作品が面白くなるのです。でもその境地には、なかなか行かないんです、これが!初役だったときには、もう二度とないかもしれない本番のときになって、初めて「こうだったか!」なんて思う瞬間なんてしょっちゅうある。でも、それがそのときの自分だし、面白くもある。一生完成はないんです。

−音楽と一体化する、というのは興味深いですね!でも、そうたくさんあることではないのですね。「このときは!」という舞台はありますか?

世界的な指揮者で、チョン・ミョンフンという方がいるでしょう。2005年に、富山県のオーバードホールであの方が振った『カルメン』で、僕はモラレスという役をやらせてもらったのですが、あのときは凄かったなぁ。自分の思っているようにも歌えているけど、ミョンフン氏も完全にこちらに合わせているわけではなくきちんとコントロールしているし、歌と芝居とオーケストラと、全部が一体となった。そんな風に思えましたね。あの感じは、めったにあることじゃない。モラレスよりエスカミーリョのほうがたくさん歌っているけれど、エスカミーリョではそういった感覚にはまだなれていないです。

—そうですか。何度も歌われているからといって、納得がいくとは限らないのですね。今回の頼朝ではどうなるか、楽しみですね!ところで、そんな数多くのご活躍で大変お忙しいそうですが、オフのときは何をして過ごされているのですか?

僕に2人子供がいるのだけど、下の息子がウルトラマンが大好きで(笑)。このあいだも、青春18きっぷを使って福島までウルトラマン巡りをしに行ってきましたよ!ウルトラマンの作者の円谷英二さんの出身地なので、福島の須賀川市や白河市や、その周辺に、スタンプラリーのようにいろいろスポットを回るコースがあるんですよ。今どきは、スタンプをペタッと押すというよりは、スマートフォンでスタンプを取るのだけど。

−面白そうですね!青春18きっぷで行かれたのですか!

行きましたよ、鈍行に揺られて。それも、全行程座れるわけではじゃないですか、50分ぐらい立っている時間があったりして(笑)。あと池袋のウルトラマンフェスティバルにも、毎年行っています(笑)。

−お休みの日はお子さんと過ごすのですね。仕事を忘れてリラックスできそうですね!

そうですね!それに、自分のためにということもあるけど、上の娘が中学生になって感じたけど、家族で一緒にどこかに行くなんて小学生のときぐらいしかできないな、と。娘と出かけることもないわけではないけれど、打ち込むことも出来て、お互い休みを合わせて取らなければいけなくなってきて、いつも「これが最後だ」と思いながら出かけている。その点、息子はまだ小学生で時間も取りやすいけれど、でも今しかない。僕自身も、この先いつまでも元気でいられるかなんてわからないし。だから、なるべくやれるときにやろうと思っているんです。

−今しかない。そのとおりですね。お子さんも嬉しいでしょうね。

こんなこと、絶対に自分ひとりではやらないじゃないですか。オペラと同じです。ちょっと大変でも、お客様が、子供が、家族が、誰かが喜んでくれるのが嬉しいから、やりたくなるんです。

森口賢二

新企画<聞いてみタイム>♪アーティストからアーティストへ質問リレー

アーティストからアーティストへ質問リレー。牧野正人さんから、森口賢二さんへ。

—今日の「聞いてみタイム♪」は、前回お話をうかがった牧野正人さんから、森口賢二さんへ、です。さて、牧野さんはどんなことを聞いてみたいと思われたのでしょうか。

オペラにおける、バリトンの役割とはなんだと思いますか?

牧野さん!これは、僕をよく分かっている人の質問ですね(笑)。さっきの話とちょっとかぶるところがあるかもしれませんが、バリトンの役割は、オペラに色合いを与える。風味を与える。だって、好きな人同士がただ好きあっただけで終わっちゃったら、何もならないですからね。さや当てだったり、悪い人だったり、そういう人が出てくるから、物語にスパイスが加わるんですよ。

森口賢二

−バリトンがいることによって、ストーリーが深く、面白くなるのですね。

そうです!バリトンが主役だった場合、たとえば『リゴレット』のリゴレットや、『マクベス』のマクベス、『ドン・ジョヴァンニ』のドン・ジョヴァンニにしても、素晴らしい声を聴かせればいいだけという役は、ほぼ無い。バリトンと、あとメッゾソプラノもそうですね。もちろんソプラノやテノールがただ歌っていればいいわけではないですけれど。でも、主役たちに何かがあったときに、助けてあげられる存在かもしれない。ちょっと変な人や、詐欺師など、日常生活ではありえないことをやる、という役が多いし。このあいだ牧野さんとご一緒した『ドン・パスクワーレ』には、ドン・パスクワーレにいっぱい食わせてやろうとする医師マラテスタがいる。『セビリャの理髪師』のフィガロは、伯爵様とロジーナをくっつけるために立ち回る。『魔笛』では、パパゲーノが天真爛漫にふるまう。『ルチア』では、ルチアの兄エンリーコが、家を守るために政略結婚を企てる。…あ、エンリーコは、頼朝と似ているかもしれませんね。

−確かに、似ていますね!物語に風味、色合い、変化をもたらす。それがバリトンの役割ということですね。とても納得できました。ありがとうございました。

取材・まとめ 眞木茜

PROFILE:森口賢二 Kenji MORIGUCHI

森口賢二

2011年 藤原歌劇団公演
「セビリャの理髪師」フィガロ役

国立音楽大学卒業、同大学大学院修了。2001~03年及び06~08年に文化庁新進芸術家海外派遣制度研修員としてイタリアに留学。第35・36回日伊声楽コンコルソ、第68回日本音楽コンクール声楽部門、第47回ヴェルディの声国際コンクール入選。第22回飯塚新人音楽コンクール、第36回ローマフェスティヴァル2007国際コンクール第1位。留学中、ローマのオリンピコ劇場、タリアコッツォのタリア劇場等、各地でオペラやコンサートに出演。03年愛知県芸術劇場「異説・カルメン情話」エスカミーリョをはじめ、帰国後は各地で「ラ・ボエーム」「愛の妙薬」「ルチア」「リゴレット」「トスカ」等に出演の他、富山オーバード・ホール/ミョンフン指揮「カルメン」「ラ・ボエーム」、産經新聞社主催/ルイゾッティ指揮「蝶々夫人」、日本オペラ団体連盟主催人材育成オペラ公演「ジャンニ・スキッキ」、サントリーホール20周年記念公演/ブルゾン共演「ファルスタッフ」などで好演。
藤原歌劇団には、06年「ランスへの旅」トロンボノク男爵でデビュー後、「ラ・ボエーム」ショナール、「愛の妙薬」ベルコーレ、「セビリャの理髪師」フィガロ、「オリィ伯爵」ランボー、「ファルスタッフ」フォード、「ラ・トラヴィアータ」ジェルモン、「仮面舞踏会」レナート、「ドン・パスクワーレ」マラテスタ「道化師」シルヴィオに出演し、いずれも好評を博している。
日本オペラ協会では09年「天守物語」姫川図書之助、17年「ミスターシンデレラ」垣内教授を好演。
19年日本オペラ協会公演「静と義経」の頼朝役で出演予定。
藤原歌劇団団員。日本オペラ協会会員。神奈川県出身。

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