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  7. Vol.28-澤﨑一了 3

CiaOpera!

スポーツ少年は、歌を学び、やがてプリモ・テノールへ。

−澤﨑さんは、日本オペラ振興会の育成部のご出身とお聞きしていますが、その頃から藤原歌劇団の『ラ・トラヴィアータ』はご覧になっていましたか?

はい。もちろん客席から観たこともありますし、研修所のときは公演のお手伝いもさせてもらえるので、そういった機会に、お客様からは見えない、裏で動いている人の数とその力というものをすごく感じました。学生時代から、角田さんが「オペラというのは、スタッフの方々の支えがなければ、自分ひとりでは出来ないんだよ」ということを教えてくださっていましたが、そのことを肌で感じて、再確認できた場でもありました。

−それは、とても良い経験でしたでしょうね!育成部に入られたきっかけは、何かあったのですか?

僕は、大学を卒業したときに「もうちょっと歌を続けたいな」と思い、自分の出身大学の大学院を受験したのですが、これが受からなくて。もちろん、そのときの自分の歌に対する姿勢を思い返しても、遊び呆けていた学生時代だったのですが(笑)。でも、大学院に受からなかったことで、自分のもうひとつの夢に「教師になる」というものもあったので、「じゃあ先生にでもなろうかな」と考えて、歌の道は大学4年生であきらめようとしたんです、実は。そのとき、仲の良かった同級生が、彼も大学院には受からなかったのですが、「藤原歌劇団のこういう育成部があるよ。大学院は残念だったけど、育成部で歌をもうちょっと勉強しようよ」と誘ってくれて。

澤﨑一了

大学4年最後の門下発表会での一枚

−素敵なお友達ですね!

そうなんです、彼とは今でも親友なんです。それで、彼と一緒に日本オペラ振興会の育成部を受験して、受かって、2年間ほど勉強させてもらいました。そのあとイタリア研修というものに行かせていただき、初めてオペラの生まれた国の空気を吸ったり、イタリアの文化を肌で感じたり、それからもちろん、あちらの研修所にもイタリア人の素晴らしい先生がたが教えに来てくださったのですが、その先生がたの声の音色や輝かしさを聴いたとき、「あぁ、自分もこうなりたい!」と思って。そこから、遊んでいるだけではなくて、もっとテクニックや人を感動させられるような歌声を目指さなきゃいけないなと感じて、それが自分にとってのひとつのターニングポイントだったのです。本当に刺激的でした。

−本物に触れて、直に感じるということが、澤﨑さんにとってはひとつひとつ財産になってきたのですね。

そうかもしれませんね。僕は、頭で考えるよりは感覚で捉えるほうが多いかもしれません。それは歌だけではなくて、いろいろな物事に対して。

−普段から、オペラはよくご覧になるのですか?

はい、行きます。自分でやっているだけだとわからないことって結構あったりして、それが人の公演を観に行って刺激をもらえる部分は大きいので、舞台を観たり、演奏会を聴いたりすることは表現をする者にとってはすごく大事だなと思いますね。あと面白いのが、「声の調子が悪いなぁ」なんて思っているときに人の演奏会を聴きに行くと、次の日めちゃくちゃ調子が良くなっていたりするんですよ(笑)。なぜかは分からないですけど。相乗効果みたいなものって、あるのかもしれませんね。

−それは面白いですね!きっと、何かがあるんでしょうね。でも、そういったことも含めて、ご自身で観に行くことも大切にされているのですね。完全にオペラや音楽を離れる日というのもありますか?

もちろんあります!僕はスポーツ観戦が好きなんです。

−スポーツ観戦ですか!ご自身でもスポーツをされるのですか?

今はもう自分ではやらないですけど、中・高はずっとハンドボールをやっていて、大学の進路も実はハンドボールの道に進みたかったのです。僕らは、ちょうどロンドン・オリンピックの世代で、「僕も頑張って大学へ行って、一流のオリンピック選手を目指したい」と思っていた時期もあったのです。でもそこで、膝の怪我をしたこともあり、いろいろ将来に不安を感じたりしているうちに、自分が本当は何をやりたいのか分からなくなってしまって。そんなとき、たまたま高校の音楽の先生がバリトンのオペラ歌手で、「困ってるんだったら、歌やってみれば?」と声をかけてくださったのです。そこで、それまでは音楽に興味もなかったけれど、なんだか知らないけれど「あ、歌やろう」って僕も思ったんですよ。「歌しかない」というか。家に帰って両親に相談したら、「昨日まで体育大って言っていたのに」って反対されて(笑)。そしたら、その音楽の先生が両親を説得してくれたんです。それで、もうピアノもそこから買って練習して。でもコールユーブンゲン(声楽学習の教材)が全然間に合わなくて、入試でも出来なかったのに、なぜか受かってしまって。そして大学で出会ったのが、今の師匠の角田さんだったのです。今思えば、本当に人に助けられてここまで来たな、と。

澤﨑一了

「私にオペラとはなんぞやと一から教えてくださった人生の師匠。大学で師匠に出会っていなければ今の自分は絶対にないと思う」と語る、その角田和弘との一枚

−そうだったのですね!ご縁がつないで、今があるのですね。ちなみに今年のワールドカップやオリンピックも観ていましたか?

観てました!この前のワールドカップは、もう、すごかったですよ!ユニフォーム着て、でっかい旗を持って!パブリックビューイングに行ったんです。

澤﨑一了

サッカー観戦へ向かう移動中の一枚「とくにサッカー日本代表の応援が一番好きです。」と語るだけに楽しそうな表情が伺える

−寝られなかったのではないですか(笑)?

寝られませんでした(笑)。

−でも、じゃあ今でもスポーツはご自身のなかで大事にされているんですね。

そうですね。好きだし、どこかに今でも自分のなかにあるし。歌うこと自体、結構全身運動で、スポーツみたいなものですけどね(笑)。ハンドボールではキーパーで、キーパーってチームの後ろからすごく声を出すんです。だから、気づいてみれば、スポーツをやりながら声も出していたし、無駄なことはなかったなと。今でもハンドボールやりたいなぁ、あのとき怪我していなければなぁ、と思うことはあるんです。でも、そんなときはもしハンドボールをやっていたら今は歌えていなかった、とポジティブに考え直すようにしています(笑)。

−そうですね、今やアルフレードですからね!お話ありがとうございました。

新企画<聞いてみタイム>♪アーティストからアーティストへ質問リレー

アーティストからアーティストへ質問リレー。森口賢二さんから、澤﨑一了さんへ。

—さて、恒例の「聞いてみタイム♪」です。前回お話をうかがった森口賢二さんから、澤﨑一了さんへ聞いてみたい質問を預かっています。

あなたの人生を変えたオペラ、もしくは人は誰ですか?

あぁ〜、いっぱいいすぎて困ったなぁ!

澤﨑一了

−そうですよね、今までのお話を伺っていると、たくさんのきっかけがありそうですね(笑)。

そうなんです。いっぱいきっかけがあるのですが、でもやっぱり歌に導いてくれた先生もそうですし、大学に入って角田和弘先生に出会ってからはオペラの素晴らしさを知ったんです。そして、じゃあ自分がオペラをやっていこうと思ったときに、声楽というものに対して感覚的に「これだ!」と感じたのは、ベタかもしれませんがルチアーノ・パヴァロッティなのです。これもまたスポーツにも通じる話ですが、日韓ワールドカップのときに3大テノールが横浜アリーナでコンサートをして。「これは行かなきゃ!」と行ったときに、本物のテノールの響きに圧倒されて。もちろん、さすがに横浜アリーナではマイクを通して歌っていて、聴こえてくる声もスピーカーを通したものではありましたが、スピーカーからでも伝わる声の圧や、それから「こんなにお客さんが熱狂するんだ!」というイタリア・ベルカントの素晴らしさにも。そこで、クラシックを歌うことへの概念みたいなものが構築されたと思うんです。もちろん、ホセ・カレーラスやプラシド・ドミンゴもそのときに聴いたのですが、パヴァロッティのあの輝かしい声に、涙が出るようでした。

−では、あえてひとり挙げるとしたら、ルチアーノ・パヴァロッティですね!

そうですね。あれが、CDなどではない、生の外国人の歌声を聴いた最初の経験だったかもしれないですしね。「今から自分はこんなことをやろうとしているのか!」とも思いましたけどね(笑)。

澤﨑一了

ローマcaracalla浴場での1枚
大好きなルチアーノパヴァロッティがサッカーW杯イタリア大会の前夜祭として三大テノールとしての活動を始めた場所での1枚

−お気持ち、お察しします(笑)。ありがとうございました。

取材・まとめ 眞木茜

PROFILE:澤﨑一了 Kazuaki SAWASAKI

澤﨑一了

2018年 藤原歌劇団公演
「道化師」ペッぺ役

国立音楽大学卒業。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第27期生修了。第30回ソレイユ音楽コンクールにて第2位、及び優秀賞受賞。第53回日伊声楽コンコルソ第2位及び五十嵐喜芳賞受賞。
藤原歌劇団には、2016年「トスカ」のスポレッタでデビュー。2018年「道化師」ペッペ役でも好評を博す。
これまでに、「カルメン」ドン・ホセ、「リゴレット」マントヴァ公爵、「ラ・トラヴィアータ」アルフレード、「連隊の娘」トニオ、「愛の妙薬」ネモリーノ、「蝶々夫人」ピンカートン、「トスカ」カヴァラドッシ、「カヴァレリア・ルスティカーナ」トゥリッドゥ、「コジ・ファン・トゥッテ」フェランド、「秘密の結婚」パオリーノ、「こうもり」アイゼンシュタイン及びアルフレード、「夕鶴」与ひょう等、様々なオペラに出演している。近年では、15年ビトントでのトラエッタ・オペラフェスティバル「蝶々夫人」ピンカートンにてイタリアデビュー。平成27年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業「ラ・ボエーム」に抜擢され、ロドルフォを好演。
その他、ヴェルディ及びモーツァルトの「レクイエム」や「第九」「メサイア」、天皇陛下御即位二十年奉祝曲「太陽の光」を歌う等、多岐に渡り活躍をしている。
藤原歌劇団団員。立教池袋中学・高等学校講師。神奈川県出身。
19年に「ラ・トラヴィアータ」のアルフレードに大抜擢されており、今後の活躍に注目が集まっている新進テノール。

今後のスケジュール

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