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  7. Vol.30-沢崎恵美 3

CiaOpera!

日本作品への愛、日本語への思いが、幅広い活動へと駆り立てる。

—ところで、沢崎さんはデビュー以来ずっと「日本オペラ」に関わっていらっしゃいますね。

はい、私はもともと日本の作品が好きだったのです。もしかしたら以前もお話したかもしれませんが、いつか『夕鶴』がやりたいという思いもあり、大学を出てどこか団体に所属しようと考えたときも、日本オペラ振興会に日本オペラ協会があるということで、最初からそこを目指して研修所に入ったのです。

沢崎恵美

1998年 日本オペラ協会公演「那須与一」静役

—最初から日本オペラの世界を目指していらしたのですね!

そうなのです。もちろん最初は知識もそこまで深くなく、漠然と「日本の作品が好きだな」というぐらいだったのですが。主人とも研修所で出会いましたし、その主人が「留学に行く」というので私自身もイタリアへ留学して、西洋オペラにググッとシフトした時期がありましたが、根底にはやはり日本オペラへの思いがあって。イタリアから戻ってきて、オペラ『山椒太夫』のオーディションを受けて「安寿」の役をやらせていただいたのを最初に、そこからずっと使っていただいて。ありがたいことですね。今とは違い、当時は研修所を修了すると、藤原歌劇団か日本オペラ協会か所属先を選べたのですが、藤原歌劇団を選ばれる方がやはり多いなか私は日本オペラ協会を選んで、大賀先生には「おぉ、自分から日本オペラ協会を選ぶとは」と思われていたみたいです。

—そうなのですね。イタリアへ留学されていたときは、もちろん西洋オペラも勉強されていたのですよね?

私は声も軽く、イタリア人の先生に「ピッコリーナ、ピッコリーナ(おチビちゃん)」とか、名前の「めぐみ」をもじって「レグミ(お豆ちゃん)」といって育てていただき、王道のイタリアオペラや、声質に合ったフランスオペラなども教わりました。『カルメン』のミカエラ、『ラ・ボエーム』のムゼッタ、『ラ・トラヴィアータ』のヴィオレッタ、私の声にとっては少し重いですが、日本人の役ということで『蝶々夫人』も小さな会で歌ってみたことはありますし、オペレッタも歌いました。

—なるほど。そんな勉強を経ても、やはり日本オペラに惹きつけられるという、その魅力とはどんなところなのでしょうか?

今、お客様のほうでも西洋のオペラをたくさん聴いて、勉強されて、作品の内容を分かって聴きに来られる方がたくさんいらっしゃると思うのです。私たち歌い手も、たとえそれがイタリア語など、お客様にすべての意味は分かっていただけないかもしれない言語であっても、内容を伝えるという行為は同じだと思います。でも、もともと音楽の始まり自体が「祈りの言葉」というようなところから来ていて、それがだんだん発展していくのですね。ですので、自分の持っている母国語で、思いと音楽とをリンクさせて伝えることができる日本の作品って、やはり素晴らしいと思うのです。昔から日本の作品というのはどうしても、西洋の音楽を取り入れてはいても下に見られがちなところがありました。けれど、きちんと西洋の美しい発声に乗せながら、普段生活で使っている言葉を“心地よく”伝えるという活動をしているのが日本オペラ協会ですし、素晴らしいことだと感じます。そうは言いながら、日本語にもどんどん新しい言葉や造語が生まれ、若い人たちが「鼻濁音」を使えなくなっているという話も聞きますし、「美しい日本語」というものが失われてきている危惧を感じることがあります。私自身、そんな今を生きていて新しい言葉を使うときもありますが、古典作品などを通して、日本語にもともとある美しさやリズム感などを後世に残していくという使命感も持っているのです。そんな意味でも、ここまで日本の作品に携わり続けてきました。

—音楽だけでなく、言葉を伝え残していくことへも使命を感じていらっしゃるのですね。

はい。私が主人と結婚する前から主催している、地元横浜で自主公演しているオペラがありまして。それはちょっと地元への恩返しとしての意味もあるのですが、小さな芝居小屋で(馬蹄形のホールです)、未就学児もOKにしたり、オペラにほとんど馴染みのない方でも見やすいように、全曲やると長いので主人が上手につないでハイライト版にしたりして、『カルメン』『魔笛』『こうもり』『ヘンゼルとグレーテル』なんかをやってきたのです。言葉も、日本語で歌って。そうすると、演目によっては親子3世代でいらっしゃるお客様がいるんです、「昔見たのが懐かしくて、みんなで来たよ!」と。楽しみに待っていてくださる。そんな風にヨーロッパの作品でも日本語で歌わせていただく機会があると、自分でも「あれ?私留学してたよね?」と思うこともあるのですが(笑)。でも留学って、今こうやって日本語で歌うための下地にはすごくなっているので、活きていると思うのです。先ほども言いましたが、やっぱりどんな言語であれ、そこに含まれている背景や気持ちを語って、伝える要素って必要で、その基本を留学では学べたのかなと思います。

沢崎恵美

舞台音楽研究会「カルメン」にて

—なるほど、根底は同じなのですね。それにしても、日本語を通して音楽を届ける活動を幅広くされているのですね。日本語と音楽、どちらへの思いも伝わります。

こんなに日本語ばかり歌うか、とも思いますけれどね(笑)。実は金子みすゞさんの詩に中田喜直さんが作曲した歌を集めた、『ほしとたんぽぽ』というCDも出したのです。私もひとりの歌い手として、自分の活動の証を残したかったということもありますけれど。

—CDも出されたのですか!金子みすゞさんの世界、あたたかいですよね。

はい、ずっとやりたいと思っていた企画で、こうして形になったのです。伴奏は、竹村浄子さん、ジャケットの絵は私の娘が描きました。金子さんの詩は、わが子への思いが美しい日本語でつづられていて、そこに中田さんが寄り添うように曲をつけている。あたたかい、日本の原風景のような世界のなかで、生と死も考えさせられる。日本語がもともと持っているリズムとか、表情などの味わいを、朗読と共にみなさんへ届けられればいいなと思ったのです。

沢崎恵美

CD収録時の1コマ 伴奏者の竹村浄子さんと

—これは、沢崎さんだからこそ表現できる世界ですね!こうして沢崎さんの表現を通して改めて気付かせられる日本語や日本の音楽の魅力、日本人だからこそ、ひとつひとつ大切にしていきたいものです。

新企画<聞いてみタイム>♪アーティストからアーティストへ質問リレー

アーティストからアーティストへ質問リレー。楠野麻衣さんから、沢崎恵美さんへ。

—アーティストからアーティストへの質問リレー、今回はもうひとチームの「大姫」楠野麻衣さんから、「静」沢崎さんへの質問ですね。

歌のお仕事のみならず、良き妻、良き母として家庭のこともきちんと両立されている、尊敬すべきプリマドンナの沢崎さん。常々ご家族思いでいらっしゃいますが、もし一ヶ月、一人きりで自分のことだけを考えて、自由に暮らせる時間があるとしたらどんな風に過ごしたいですか?

まず寝たい(笑)!誰にも邪魔されず、自分の睡眠をとりたいですね。そして、もっと長く譜面と台本に向き合う時間をつくりたいなと思います。あとは、自分のなかの知識を深めるために映画を見たり、本を読んだり、ちょっと旅行にも行ってみたいし。自分の引き出しを増やすための時間がほしいですね。本当は、つくろうと思えばいくらでもできると思うのですけれど、どうしてもなにかをやっていても「あ、ごはんの時間だ!なんとかしなくちゃ!」となる。そうではなく、自分の向き合っていることにどっぷり浸かれるというか…でも、それも飽きちゃうかな(笑)。

—すごいですね、自由な時間が出来たとしても、やっぱりご自身の音楽にとって肥やしになるようなことのために使おうと思われるのですね。

寝ていることも多いと思いますけれどね(笑)。でも、こういうお仕事をさせていただいていると、もちろん母であり、妻の時間もありながら、こうして家の外へ出て、一個人の歌手・沢崎恵美としていられる時間もあるので、やはりそれってすごく幸せなことだなと思うのですよね。とは言いつつ、やっぱり自分の原点に戻るような時間に当てられたらいいなぁ、なんて思います。ちょっとかっこいいこと言っていますけど(笑)。友達にも会いたいし。おいしいものも食べたいし。要するに、人間としての欲求です!

沢崎恵美

—はい(笑)。でも、ご自身と向き合う時間にというご意見、素直に素晴らしいと思います。ありがとうございました。

取材・まとめ 眞木茜

PROFILE:沢崎恵美 Megumi SAWAZAKI

沢崎恵美

2015年 日本オペラ協会公演
「袈裟と盛遠」袈裟役

 洗足学園音楽大学卒業。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部第10期生修了。91~94年イタリアに留学。平成8年度文化庁芸術インターンシップ研修員。第5回「叱られて」歌唱コンクール第1位及び清水かつら大賞受賞。
 育成部修了オペラ公演「サンドリヨン」のタイトルロールでオペラデビュー。ヴィオッティ音楽院で研鑚を積み、イタリア各地で各種コンサートに出演。「ラ・ボエーム」のムゼッタでは好評を得た。
 日本オペラ協会には、「山椒太夫」の安寿でデビューを飾り、以降「魅惑の美女はデスゴッデス!」死神、「モモ」一等航海士、「那須與一」静御前、「高野聖」女、「袈裟と盛遠」袈裟、「天守物語」亀姫、「よさこい節」お馬で出演し、いずれも可憐で艶やかな舞台姿は好評を得ている。
 その他、「ラ・トラヴィアータ」「蝶々夫人」「カルメン」「ヘンゼルとグレーテル」「こうもり」や「サウンド・オブ・ミュージック」のマリア等ミュージカルにも出演。日本歌曲・童謡・唱歌を中心としたコンサート、リサイタルを日本各地で開催し、ヴォイストレーナーとしても活躍している。CD「ほしとたんぽぽ~愛するこどもたちへ~」発売中。
 地域創造公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト。神奈川県出身。

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