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CiaOpera!

特に思い入れのある曲と、本当に深い“表現”への考察について。

思い入れといえば、トスティの『アマランタの4つの歌』です。これは、去年の秋ごろに、ピアニストの河原忠之さんから「これ、すごくいい曲だから」と勧められたのがきっかけで知った曲です。そのとき、僕はまだ「へぇ、そうなんですか、じゃあ見てみましょう」というぐらいでした。『アマランタの4つの歌』というと、2曲目の「暁は光から」という曲はとても有名で演奏会でもよく歌われるのですが、他の3曲は一回も聴いたことがありませんでした。けれど、これがどれもすごくいい曲なのです。そして「4つの歌」というだけあって、4曲セットでないと意味がない。たとえばテレビドラマでも、「この場面が面白いんだよな」と思ったとしても、その場面ばかりを見ていても意味を成さないのと同じです。もちろん、そこを面白いと感じることはそれでいいかもしれないけれど、話の流れとして成立はしていないですよね。同じく、この有名な2曲目も、単独でも映えるしよく歌われるけれど、4曲でひとつのドラマが成立するということが、勉強して掘り下げていくうちにどんどん分かってきた。だから、今は大好きだし、すごく思い入れのある曲です。

—確かに、4曲セットで聴ける機会はほとんどありませんね。ぜひ聴いてみたいです

でも、難しいです!

—そうなのですか!どんなところが難しいのでしょうか?

ひとつは、僕が今まで歌曲を突き詰めて勉強することがあまりなかったということです。どちらかというとオペラが多かったわけですが、歌曲って、オペラよりもっと内容が深い。その要因は、曲の長さにもあると思います。オペラって平均で2、3時間あってそのなかにアリアがあって。でも歌曲は、たとえばこの『アマランタの4つの歌』はダヌンツィオという人が詩を書いているのですが、その詩は日本語に訳しても一見意味が分かりづらい。でも、何度も触れていろいろなことが見えてくると、ものすごく深いことに気づくのです。この短い曲のなかに、詩人がどんな気持ちで書いたのか、どんな意味を込めたのか、という世界観が凝縮されている気がするのです。

笛田博昭

—短い曲の中でその世界観を表現するのが、難しさでもあるのですね。

はい。このあいだ、新潟のリサイタルで初めてこの曲をお客様の前で披露したのですが、やっぱりすごく難しかったです。どんな曲でもそうかもしれませんが、練習のときにやっていることがそのままパッと表現できるかというとそうはいかないし、この4曲に関してもそれぞれの曲で違う表現が求められます。この“表現”ということに関しても、僕はこの歳になってようやく気付いてきました。

—笛田さんの表現は以前から素晴らしいと思っていましたが、今だから気付けることというのもあるのですね。

そうですね。もちろん以前から考えていなかったわけではありませんが、それをもっと考えるようになったのです。最近自分がこうして掘り下げることを始めて、歌い手って、表現者として役者よりももっと役者じゃないといけないと思えた。真の表現って、たとえばほとんど動かなかったとしても何かが伝わることかな、と。もちろん、「こういうアクションをした方が英雄っぽい」などの視覚的効果はあると思います。でも、リサイタルのときは衣装もなければ相手役もおらず、ピアノと自分だけ。じゃあ何で表現するかといえば、言葉のニュアンスだったり、どういう意味合いでその音を発するかだったり、そういうことが重要になるのですよね。そして、それは逆に衣装を着ていても同じことで、そこが役者よりも芝居ができなければオペラ歌手って成立しないのだな、と感じたポイントです。

—笛田さんのご意見に、とても共感を覚えます。オペラは、登場人物それぞれの人格を表した音や歌詞で構成されていますから、役者がセリフを言い演じるように、その人物としての歌詞を歌い、音を発する演技が求められますよね。

数年前まで、僕自身もそれが出来なかったのですけれどね。

—それは、意外です!けれど、今回のリサイタルでは深みを増した笛田さんの“表現”に触れられることも楽しみです。

ありがとうございます。思い入れが深い曲の話に戻りますが、『運命の力』の「おお、天使の胸に抱かれている君よ」もあります。僕は、なぜか分からないけど『運命の力』が一番好きなオペラなのです。「ドン・アルヴァーロ」という人物にすごく共感できるからかもしれません。もちろん、ドン・アルヴァーロはインカ帝国の末裔で、牢獄で生まれて、という壮絶な生い立ちを背負っていて、苦しい恋をして、僕とは全然違うわけですが(笑)。でも、何かスッと入ってくるものがある。僕はもともと影を持っていたり、不幸を抱えている役のほうが入り込みやすいと感じるのです。

—普段明るくおおらかでいらっしゃる笛田さんだからこそ、かえって影のある役が引き立つのかもしれませんね。では、前半はトスティの『アマランタの4つの歌』、後半は『運命の力』「おお、天使の胸に抱かれている君よ」が特に聴きどころとなりそうですね。

はい、そうですね。もちろん、どの曲もちゃんとお届けしようと思いますけれど。

—それはその通りですよね!どの曲も、目が離せません。

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