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  7. Vol.33-笛田博昭 3

CiaOpera!

スカレーラ氏の奏でる真の音楽と、常に成長することへの欲求について。

—冒頭に少しお話くださいましたが、後半最初のフランス作品にも惹かれます。マスネ作曲『ウェルテル』のアリアに続く2つの歌曲は、今回のピアニスト・スカレーラ氏のご提案もあったとお聞きしました。

はい。その提案は、たぶんシンプルに同じマスネのオペラ作品を歌うから続けて、という意味だと思いますが、「エレジー」と「君の青い目をひらいて」を歌います。

—エレジー」はときどき聞かれるように思いますが、「君の青い目をひらいて」は珍しいですね!こういった、なかなか聴けない曲にお目にかかれるのと、有名曲とのバランスにも、今回とても心惹かれます。スカレーラ氏との共演に至ったきっかけはどのようなものだったのですか?

2年ほど前に、四ツ谷の紀尾井ホールで一緒にコンサート出演させていただいたのがきっかけです。そのときに気に入っていただき、去年のちょうど今頃にこのリサイタルの伴奏をお願いしたら、「喜んで」と言ってくださったのです。

—笛田さんのお人柄や表現にも惹かれたのでしょうね。スカレーラ氏の伴奏で歌うと、どうお感じになりますか?

このあいだ3月末から4月頭にかけて、ミラノで5回も伴奏合わせをやっていただいたのですが、「何だ、このピアノは!?」と驚きましたね。あっさりしている。全然粘っこくなく、感情を入れ込んでもおらず、ただ淡々としている。なんと言い表したら良いか分からないけど、「あっさり」とか、「カラッとしている」が一番当てはまるかなぁ。だけど、それが素晴らしい。もちろん音楽性もあるし。「これが音楽だ!」と思えた。粘ったり、自分に陶酔したりということではない。もちろん、そういう部分も多少は必要。けれどその的確な塩梅というか、それを目の前でまさにやってくれるのがスカレーラさん。先ほどの話にもあった“表現”ですよね、それも超一流の演奏家の。あと何が違うかって、“間”ですね。間のとりかたで、音楽って決まると思いました。

笛田博昭

—間ですか

そう。彼と合わせているときに、「なんでこんなに歌いやすいのかな?何がそんなに違うのかな?」と考えたときに、間だなと。とにかく歌いやすい。あと、普通の伴奏者は歌に“合わせよう”とするのですが、スカレーラさんはスッと“寄り添って”くれる。合わせるって、どこまでいっても平行線なイメージなのだけど、寄り添うって融合なのですよね。重なるというか。だから音楽に立体感も出るし、全然違うものが出来上がるのだと思います。

—そうですか。おふたりの音楽が融合した世界、お聴きするのが待ち遠しいです。

プログラムのどこかで、ピアノソロも弾いてくださるそうなので、楽しみにしていてください。

—スカレーラ氏の演奏そのものも楽しめるのですね。贅沢なひとときになりそうです。今回のプログラムには、笛田さんご自身の、この先の音楽活動を見据えた部分も反映されているのでしょうか。

もちろん、今回このリサイタルをやることで、絶対得られるものってあるし、実は直前の5月30日にもスカレーラさんと紀尾井ホールでコンサートをするのですが、そうやって共に本番を重ねることで変わっていくことはあると思う。これを機にようやく、歌い手としてスタートに立てた感じです。

—笛田さんがそうおっしゃると、深みがありますね。

でも本当に、ここがスタートという気はしています。自分自身、「これぐらいで成長が止まるかな」のような限界というものをまったく感じてないのです。あと10年したら分からないですけど、でもたとえ70歳になっても「自分はここからだ」と感じているような気はします。イチローという野球選手も同じようなことを言っていました。「50歳のときの自分の現役を見てみたい」って。それって常に自分が成長していたいし、それが出来ると思っているから言えることだと思うのです。でも彼がかわいそうなのは、野球は勝負で、相手があってのことだという点ですね。彼自身はものすごい努力をしていて、人一倍研究もしていると思うのですけど、相手があって、今まで打てた球が打てないぞ、打てないぞ、という現実を突きつけられるというか。でも音楽って、ほぼ自分との闘いだから、自分が向上心を持っていれば一生うまくなれるものだと思っています。

笛田博昭

—いつでも成長を求めていらっしゃるのですね。本当に深いお話です。先といえば、笛田さんは来年2月の『リゴレット』にマントヴァ公爵役でご出演予定ですね。

僕、『リゴレット』は初めてなのです。でも、今の歳でやることになってよかったと思うところはあります。いろいろなテクニックも身につき、表現の深さということにも目覚めた今で。でも表現って難しいですよね。作曲家がもうその音符を付けて、音楽を決めたものだから。本当は楽譜に書いてあるとおり忠実に表現すれば、だいたい意図したように伝わるようにできているはずなんです。だからといって、楽譜に書いてあるとおりの音階と言葉をただ正しく発すれば伝わるかっていうと、そういうものでもないんですよね。そこに感情がついていかないと伝わらない。でも、感情ばかりが先走ってもいけない。

—なるほど。「楽譜に忠実に」とは、音楽のこと、言葉のこと、感情のことをいろいろと模索して、一周まわらないと戻って来られない、原点のような表現法かもしれませんね。

そういうことだと思います。一周どころか、二周ぐらいしないといけないかもしれない。でも、結局原点って正しい。正しいけど、いろいろな要素を入れ込んでいかないと、ということだと思います。

—笛田さんの音楽世界は、この先もますます深まり、広がっていきそうですね。お話ありがとうございました。

新企画<聞いてみタイム>♪アーティストからアーティストへ質問リレー

アーティストからアーティストへ質問リレー。迫田美帆さんから、笛田博昭さんへ。

—今回の聞いてみタイムは、前回お話をうかがった迫田美帆さんから、笛田博昭さんへの質問です。

声のために日々の生活に取り入れていること(トレーニングや食事など)はありますか?

特別なことは、何にもしてないです(笑)。食生活かなぁ。本番前はお酒や辛いものを控えるとか。ただ、すごく神経質ではある。ちょっと喉にきたなと思ったら、急にしゃべらなくなったりします。トレーニングもないなぁ。

笛田博昭

—ない、というのも潔くて格好いいですね!

蘭鋳(らんちゅう)の世話ぐらいかな(笑)。

—以前『カプレーティ家とモンテッキ家』のインタビューのとき、普段の過ごし方のお話でも伺いましたね!蘭鋳は元気ですか?

元気です、今日も世話をしてきましたよ。以前は何十匹もいたのが、今は3匹しかいないですけど。でも少ない3匹を、めちゃくちゃ可愛がっています。他では見たことないぐらい大きい、金魚の王様ですよ。

笛田博昭

—お写真も見せていただきましたが、笛田さんの蘭鋳、可愛く美しいですよね。もしかすると、そんな心のオフが声のためになっているのかもしれませんね。以前のお話でも、オフの日は何にもしない、とおっしゃっていましたね。

そうですね。じゃないと身がもたないですよね。これまではあんまり考えたことなかったけど、歌うときってたぶんエネルギーの放出がものすごいんですよ。だから何もしない日をもたないと、自分を保てないですね。あとは、さっき言ったように…禁欲ですね(笑)。

—しっかりオフと、禁欲!分かりやすいです。ありがとうございます。

取材・まとめ 眞木茜

PROFILE:笛田 博昭/Hiroaki FUEDA

笛田博昭

2019年藤原歌劇団公演「蝶々夫人」
ピンカートン役

名古屋芸術大学卒業、同大学大学院修了。2009年渡伊。2011年文化庁新進芸術家海外研修員として再渡伊。第37回イタリア声楽コンコルソ・イタリア大使杯受賞。第9回マダム・バタフライ世界コンクール及び第50回日伊声楽コンコルソ第1位。 藤原歌劇団には「ラ・ボエーム」ロドルフォでデビュー以降、「ラ・ジョコンダ」エンツォ、「仮面舞踏会」リッカルド、「蝶々夫人」ピンカートン、「トスカ」カヴァラドッシ、「カプレーティ家とモンテッキ家」テバルド、「カルメン」ドン・ホセ、「ノルマ」ポッリオーネ、「道化師」カニオと出演を重ねている。20年2月には「リゴレット」のマントヴァ公爵で出演予定。 その他フェッラーラ市立劇場「イル・トロヴァトーレ」、日中国交正常化35周年記念・第9回上海国際芸術祭公演「蝶々夫人」や「椿姫」「トスカ」「マクベス」「ドン・カルロ」「運命の力」など各地で多数のオペラに出演。 また、NHK-FM「名曲リサイタル」、NHKニューイヤーオペラコンサート、K-BALLET COMPANYや東京フィルハーモニー交響楽団の「第九」など各種コンサートに出演。今最も注目されているテノールの一人で、今後の活躍に期待が高まっている。第20回五島記念文化賞オペラ新人賞受賞。湯沢町特別観光大使。藤原歌劇団団員。

今後のスケジュール

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