1. トップ
  2. >
  3. 公演情報・チケット
  4. >
  5. CiaOpera!
  6. >
  7. Vol.34-小堀勇介・中井奈穂 3

CiaOpera!

心強い共演者について。共に挑んだイタリアの夏について。

—共演者の方々は、おふたりとも初めての方が多いでしょうか?

小堀 僕は、ほとんど皆さんが初めてです。

中井 私は、大学院のオペラで三浦克次さん、大石洋史さんとご一緒しました。しかも、そのときも初めてのオペラで、演目は『愛の妙薬』でした!私はジャンネッタ役でしたが。

—大学院で初めてのオペラも『愛の妙薬』、今回も『愛の妙薬』。ご縁がありますね!

中井 本当にそうですね(笑)。

小堀 三浦さんは、もうずっとドゥルカマーラで何プロダクションもやってこられたと伺いましたし、今回稽古でご一緒してもそれが伝わり、三浦さんがそれぞれの場面で何をなさりたいかが明確に分かるのです。また、ご自分の役だけでなく他の役についても、歌い手それぞれがどういうタイミングで何をしたら作品としてグッと締まるものになるかというアドバイスをくださり、舵取り役をしてくださっています。大石さんは、藤原歌劇団本公演でのベルコーレは初めてとおっしゃっていましたが、ご経験はもちろん豊富ですし、おふたりは強力な2本の柱という感じで心強いです。

—心強いですね。マエストロの山下一史さんとは、今回が初めてのお仕事ですか?

小堀 はい、初めてなのですが、稽古で何度かお越しいただき、オーケストラと歌い手との関係性を綿密に考えていらっしゃるのだと感じました。

中井 いつも「オーケストラを想像して」とおっしゃいますよね。

小堀 そうですね。すごく音楽的な視点から作品をご覧になっていると思います。もちろんドラマについても把握されていながら、舞台作りは演出家である粟國さんに、と明確な住み分けをされているのが感じられ、おふたりの視点が融合して素晴らしい作品が作り上げられると思います。

小堀勇介・中井奈穂

—本当に、素晴らしい作品になりそうです。何よりも中井さんと小堀さんのおふたりが、お互いによくご存知なことも、素敵なアディーナとネモリーノを拝見できそうだと思えます。おふたりが参加された、ロッシーニ・オペラ・フェスティバルのお話も少しお伺いできますか?

小堀 はい。あれは楽しかったですね!2016年の夏、2ヶ月間の参加でした。ロッシーニ・オペラ・フェスティバル自体は、ペーザロというロッシーニが生まれた町で毎年開かれています。僕はその前の2015年12月からイタリアに留学していて、3ヶ月後の2016年3月にオーディションを受け、結果的に僕と、中井さんと、もうひとり山本康寛さんというテノールの方が参加されました。あとでゼッダ先生にお聞きしたら、「今年は稀なんだよ、日本人で3人とる年はないんだよ。中井さんがすごくいい歌を歌ったので、僕は彼女をとったんだ」とおっしゃっていました。

中井 本当ですか?私はあの頃イタリア語がほとんどわからなくて、常に怒られていると思っていたのです(笑)。

小堀 褒めていたんだよ(笑)。僕もゼッダ先生のお言葉を聞いて、「そうか、よし頑張るぞ」と思いました。そこから2週間のアカデミア期間を経て、1ヶ月半後にある『ランスへの旅』のキャスティングがされていくのですが、みんな複数の役を同時に勉強して、その中でオーディションの日までに仕上げられ、なおかつその人に合う役が選ばれるのです。そこには妥協や優しさは一切なくシビアで、けれど合理的な決め方でもありました。

中井 あの夏は濃かった…今思い出しても涙が出そうです。でもあの経験があったから、私は今ここで歌っていられるんだと思います。あのときに覚悟も決まったし、得たものの大きさは計り知れません。

小堀 ひとつエピソードがあって。アカデミアの期間中、ダミアーノ・ミキエレットという演出家の方が、1コマだけ舞台での動きのマスタークラスを開講しにきてくれたのです。そのとき、最初に各々自己紹介をする場面があって、当時の日本人のメンバーのなかでは僕がどちらかというとイタリア語が話せたので、中井さんの通訳をしようかなと思っていたら、「いえ、先輩。ここは自分でいきます」と言ったのです。「かっこいいー!」と思いましたね(笑)。

中井 赤ちゃんがしゃべるような感じで、ポツリ、ポツリでしたけどね(笑)。

小堀 いえいえ、その心意気がすごい。それでこそプリマだなと思いましたよ。それまで、一緒にいたクラスの人たちはなんとなくよそよそしかったのですが、その出来事をきっかけに「ナオ、ナオ!」と声をかけるようになったのです。

中井 みんないい子だった!

小堀 そうだったね!いろんな国籍だったし。今では皆さん、すごく活躍されています。僕自身の思い出としては、アカデミア中、僕にとって理想のテノール歌手であるファン・ディエゴ・フローレスのマスタークラスが1日あったことです。それで、僕はその日をすごく心待ちにしていたのですが、なんと前日に声が出なくなって!ゼッダ先生も、「お前の声はファン・ディエゴに聞かせたかったのだけど、しょうがない、声が出ないのなら今日は休め。聞くだけでも勉強になるから。」と言われたので、あのときはもう断腸の思いでイスに座りましたね。でも、人の声が、フローレスのアドバイスでどう変わるのかということはつぶさに観察できて、よかったのですけれど。

中井 私自身がよく覚えているのは、『ランスへの旅』のフィナーレか何かを稽古をしていたときだと思います。そこへゼッダ先生がふらりと入っていらして、しばらく稽古を見学されて、途中で突然「こんなんじゃダメだ!」と怒り出したのです。そして、先生ご自身が指揮を振りはじめた瞬間、「あ、音楽ってこんなにカラフルなんだ!」とびっくりしました。その一瞬で、空気も、においも、色も全部変わって。「あ、本当はこうやって歌わなくてはいけなかったんだ。芸術ってこういうものなんだ」と感動しました。そして、私がやろうとしているのはこういう世界で、まず自分自身が感動しなければいけないし、けれど自分だけで感動するだけでなくその感動を、押し付けではなく、お客様自身がビリビリと感じるかのように “伝染”させていかなければいけないのだと思いました。大切なことを教えてくださったゼッダ先生と同じ空間にいられて、とても幸せでしたね。

小堀勇介・中井奈穂

新企画<聞いてみタイム>♪アーティストからアーティストへ質問リレー

アーティストからアーティストへ質問リレー。笛田博昭さんから、中井奈穂さん・小堀勇介さんへ。

—今回は、前回の笛田博昭さんから、中井奈穂さん、小堀勇介さんに、ちょっと本質的な質問をお預かりしています。

小堀勇介・中井奈穂

お二人にとって“歌”とは何ですか?

小堀 深い質問ですね!僕にとって、歌は自分自身をよりまっすぐに表現してくれるひとつのコミュニケーション・ツールでしょうか。ついつい言葉だといらないことを言ってしまったり、意図してないところが伝わってしまったりということってあると思うのですが、歌を歌っているときって、純粋に自分のなかの音楽性だったり、自分が普段考えているようなことをさらに掘り下げたようなこと、普段自分では絶対口には出来ないようなことも、歌に乗せると明確にコミュニケーション出来ると思います。だから、しゃべるよりも、もしかすると僕にとってはラクかもしれない(笑)。最近、コンサートが終わったあとの会場でも、僕の歌った歌を受け止めてくださったお客様とお話すると、「あ、ちゃんと舞台上からコミュニケーションがとれていたかもしれないな」と感じることが増えてきたと思います。僕にとって歌とは、雄弁に自分を伝えられるものといえます。

中井 私は、歌からいろいろ学ばせてもらっていると思います。感情とか、言葉とか、全部のことを。歌、というより声を発することって、そうしようと思えば何も感じずにできてしまう面もある気がするのですが、そこに気持ちや魂を込めようと思ったらたくさん歌を読むし、そこからいろいろな事を知る…ということでしょうか。歌を歌うことによって、日々、心が豊かになりつつあると思います。

—小堀さんにとっては、よりまっすぐご自身を表現するコミュニケーション・ツール、中井さんにとっては歌に多くの学びを見出して、心の豊かさを得ているのですね。お答え、ありがとうございます。

取材・まとめ 眞木茜

PROFILE:小堀勇介/Yusuke KOBORI

小堀勇介・中井奈穂

 

国立音楽大学卒業、同大学大学院修了。卒業時に矢田部賞、修了時に声楽部門最優秀賞を受賞。卒業時に宮内庁主催の桃華楽堂新人演奏会に出演。新国立劇場オペラ研修所第15期修了。2016年文化庁新進芸術家海外研修生として、1年間イタリアのボローニャへ留学。第7回静岡国際オペラコンクール入選並びに三浦環特別賞を受賞。第36回飯塚新人音楽コンクール第1位。第16回東京音楽コンクール声楽部門第2位。これまでに福井敬、S.ベルトッキの各氏に師事。 新国立劇場オペラ研修所修了後に、沼尻竜典作曲「竹取物語」の石作皇子並びに大将として出演。留学中は故A.ゼッダ氏のもとで研鑽を積み、イタリアのペーザロにて16年ロッシーニ・アカデミーに参加し「ランスへの旅」のリーベンスコフ伯爵、カナダのルーネンバーグではロッシーニ・オペラ・アカデミー2016に参加し「ラ・チェネレントラ」のドン・ラミーロとして出演。帰国直前にオーストリアにてG.クーン氏の指揮のもと、チロル祝祭歌劇場公演「アルジェのイタリア女」のリンドーロで本格的なヨーロッパ・デビューを果たした。17年に帰国し、びわ湖ホール公演(指揮:園田隆一郎)「連隊の娘」のトニオで出演。 藤原歌劇団には、18年「ラ・チェネレントラ」のドン・ラミーロでデビュー。同役は大阪国際フェスティバル公演にも出演し、両公演ともに大喝采を浴びたのは記憶に新しい。本年11月ベルカントオペラフェスティバル イン ジャパン2019「貞節の勝利」のフラミーニオ・カストラヴァッカで出演予定。 その他、フランスにてメドック音楽祭のデュオ・コンサート、イタリアのローマにてモーツァルト(指揮:西本智実)「戴冠ミサ」及び「レクイエム」のソリストを務めるなど、海外でも活躍している。主にレッジェーロの役柄をレパートリーにしており、若手テノールとして注目を集めている。 日本ロッシーニ協会会員。イルミナート・フィル登録アーティスト。福島県出身。https://www.kobori-tenor.com

今後のスケジュール

PROFILE:中井奈穂/Nao NAKAI

小堀勇介・中井奈穂

 

国立音楽大学卒業。昭和音楽大学大学院修了。第1回立石信雄海外研修奨学金、昭和音楽大学下八川圭祐基金、同大学同伶会海外研修奨学金を得て、イタリア・ミラノに留学。ロッシーニ・オペラ・アカデミー、ティチーノ・ムジカに参加。第21回日本クラシック音楽コンクール声楽部門一般の部第4位。第51回・第54回日伊コンコルソ入選。イタリア・ピエンツァにて第7回オペラ歌手のための国際コンクール入賞、イタリア・トリノにて第2回ピエモンテ国際オペラコンクール第2位。 2012年昭和音楽大学オペラ公演「愛の妙薬」のジャンネッタでデビュー。同公演には、14年「夢遊病の娘」アミーナに出演。15年昭和音楽大学・上海音楽学院共同プロジェクトオペラ公演「フィガロの結婚」スザンナと、17年「ドン・ジョヴァンニ」ゼルリーナでは、日本と中国上海の両公演で出演している。また、18年「ファルスタッフ」のナンネッタで好評を得た。 海外では、16年イタリア・ペーザロにて、ロッシーニ・オペラ・フェスティバル主催アカデミー公演「ランスへの旅」のコルテーゼ夫人、17年スイス・ルガーノにてティチーノ・ムジカ主催オペラ・スタジオ公演「コジ・ファン・トゥッテ」のデスピーナで出演。 その他、昭和音楽大学の文化庁委託事業「平成25年度 次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」にて新進歌手オーディションに合格し、世界的ソプラノ歌手M.デヴィーアの推薦を得て新国立劇場にて行われた披露演奏会に出演。15年、韓国ソウルで行われたアジア文化交流促進連盟のカンファレンスにアーティストで参加し、女声デュオ「ジーリスピーガ」としてコンサートに出演。17年、中国の上海東方芸術センターで行われた「メサイア」のソリストを務めた。また、BS-TBS日本名曲アルバム、アルテリッカしんゆりのコンサートにも出演するなど、活躍の場を広げている。 今回が藤原歌劇団にデビューとなる新進ソプラノ。本年9月「ランスへの旅」のデリアで出演予定。 藤原歌劇団団員。静岡県出身。

今後のスケジュール

ページ上部