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  7. Vol.38-長島由佳・丹呉由利子 2

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体も心も強く、しなやか。人間女性の象徴のような「伊賀の局」の魅力。

—今回おふたりが演じる「伊賀の局」という役は、原作である『ガラスの仮面』のなかの《紅天女》には描かれていないですよね。一体どういった人物なのでしょうか?

丹呉 伊賀の局は楠木正儀の奥さんで、実在の人物なのです。確かに原作には登場しないので、私も最初の頃にインターネットや文献で調べてみたら、すぐに情報が出てきました。それによると、男の人たちが怖がる幽霊を追い払いに行くだとか、松の木を倒して川に架け、橋にして皇太后様を背負って渡ったとか、すごく強い女性としていろいろな逸話が残っていて、それを読んできっと素敵な役に違いないと思いました。

—なるほど。楠木正儀の妻として、実在した女性なのですね。

長島 先日、美内先生ご自身からお話いただいたことなのですが、台本にはもともと伊賀の局と夫・正儀のやりとりがあったけれど、それを全部楽譜に起こすと6時間ぐらいかかる公演になってしまうので、ずいぶん削られたのだそうです。けれど、私たちとしてはぜひその楽譜に起こされなかった部分も踏まえて役に臨みたいと思ったので、先生にいろいろと聞かせていただき、それでずいぶん伊賀の局という女性のキャラクター像が見えてきました。

丹呉由利子氏

丹呉 《紅天女》という作品には、どこか日本神話のような、ファンタジーな要素があると思うのですが、そのなかに私たちの家族が実在の人物として出てきて、加えて伊賀の局は、おそらく古今東西、万国共通すべての女性たちがこう感じるのではないかなと思えるような歌を歌います。美内先生の台本には、ただの面白くて素敵なファンタジーでは終わらない厚みのようなものがあり、メッセージ性がものすごく強いなと思うのですが、実在の人物である私たちが登場することで、「現実味」というその“厚み”の一助になれるのかなと思いました。伊賀の局は、いわば「人間女性の代表」であると強く感じています。

長島  はい、私もそのことは感じます。

—伊賀の局や楠木正儀ら実在した家族の存在が、ドラマをよりいっそう骨太にしているのですね。

長島  そうですね。先ほどもお話ししたように、美内先生からもお話を伺うことで、よりいっそう伊賀の局という女性の力が強く、たぶん精神的にも強い勇敢な人物像が見えてきたのですが、さらに踏み込むと、私はその「強さ」というのは、「柔らかさ」のことではないかと思うのです。物質としてハードでガチッとしたものは意外と壊れやすく、反対に柳の枝のようなものこそ、柔らかそうに見えて実は雨にも風にも耐えうる強さを持っているのでは、と。私が捉えている伊賀の局の強さとは、そういうイメージです。

—芯の強いしなやかさ、という感じですね。

長島  はい。そう思います。

—なるほど。では、実際彼女をどのように表現しようと考えていらっしゃいますか?

長島  息子の楠木正勝は、父・正儀のことを頼りない男性だと思っているのですが、妻である伊賀の局はそんな夫を信じているし、支えたいと考えていると思います。それがはっきりやりとりとして描かれているわけではないのですが、その気持ちを表現したいし、それは楽譜に書かれていない“音楽の行間”をどう埋めていくかという作業になると思います。

丹呉 伊賀の局を含めた家族のことを「人間チーム」と捉えていて。紅天女が天女だからこそ抱える苦悩と、伊賀の局がこの時代に生きている女性であり母であり妻である存在だからこそ感じている苦悩って、全然種類が違うのですが、大きく捉えたときに同じ女性として、紅天女は考え抜いた結果出した答えがあり、そして人間の女性もそれはそれで苦しみながらも必死に考えて生き抜いたというところが出せればなと思っています。そこが表現できたら、最終的には伊賀の局の強さみたいなものをお客様に感じ取っていただけるのではないでしょうか。

長島  それでいうと、「伊賀の局」として強く生きながらも、私が歌い演じることで夫や息子を役として、より鮮明に浮き上がらせたいとも思っています。夫・正儀は妻のことを「留守を守ってくれてありがとう」と信頼してくれていて、妻は妻で、家を守ることで夫と一緒に闘っているつもりでいる。そのお互いが敬いあって成り立っている関係みたいなものが出せればいいですよね。

丹呉 私は、「世の中を動かしているのは、実は女性である」みたいな部分を、彼女に感じています。テレビの時代劇などでも、「その時代を強く生きた女性」ってここ10年ぐらいテーマになる確率が高い気がしていますが、伊賀の局もそれに近いような気がします。作品の舞台となっている日本の南北朝時代にあっても「戦争だけが全てじゃない」というような視点の慈しみ方を、女性って持っている気がします。この時代の、不特定多数の武士の妻であり母親たちは、多かれ少なかれこういう思いを抱いて強く生きてきたのだな、と捉えています。

—おふたりそれぞれの捉え方もありつつ、現代の女性にもとても共感していただきやすい人物なのですね。

長島  過去のモデルもないので、両チームでそれぞれ全然違うものになると思いますし、ぜひどちらのチームの日もお越しいただき違いを楽しんでいただきたいです。

—確かに、両チーム必見ですね!

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