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作品について

ベッリーニ作曲

オペラ全3幕 字幕付き原語(イタリア語)上演

天才ベッリーニによるベルカントオペラの最高峰

美しくも儚い・・・メロディメーカーのベッリーニが最語に遺した壮大なラブ&ヒストリー

 

 

イントロダクション

藤原歌劇団が新国立劇場、東京二期会とタッグを組んで今回上演するのは、ベッリーニ最後のオペラとして知られる「清教徒」をニュープロダクションでお届けいたします。
17世紀のスコットランドにおける王朝とクロムウェルとの抗争を背景にした「清教徒」は、ベッリーニが一年余りを過ごしたパリで死の直前に書き上げた最後のオペラであり、アンサンブルやオーケストラの用法に新しい時代の到来を感じさせるような劇的な展開が魅力の、いわば“大河オペラ”とも言えるスケールの大きい作品です。今回その超絶技巧とも言えるエルヴィーラ(S)とアルトゥーロ(T)をそれぞれ務めるのは、ベルカント・プリマドンナで定評のある二人のソプラノ佐藤美枝子(9/10&12)と光岡暁恵(9/11)、軽快なレパートリーから叙情的な役までも歌いこなす二人のテノール澤﨑一了(9/10&12)と山本康寛(9/11)という、この演目に最も適したキャストを配しました。その他、ジョルジョには伊藤貴之(9/10&12)、小野寺光(9/11)、リッカルドには岡 昭宏(9/10&12)、井出壮志朗(9/11)と、藤原歌劇団を代表する歌手陣がこの大作に挑みます。指揮はイタリアオペラに定評のある柴田真郁が東京フィルハーモニー交響楽団を先導、演出は作品の描写で一目おかれる松本重孝が新制作。今回は藤原歌劇団合唱部に加え、新国立劇場合唱団、二期会合唱団と共に、来年で開場25周年を迎える新国立劇場オペラパレスよりお届けいたします。

見どころ・聴きどころ

第1幕:まずはリッカルドのアリアにご注目。バリトンが音の流れをゆったりと歌い繋ぎ、苦しい男心を露わにする。ジョルジョとエルヴィーラの二重唱では、コロラトゥーラの奔流が娘の不安な面持ちを代弁し、〈合唱と四重唱〉では騎士アルトゥーロが、超高音のハイC#を愛の煌めきとする。また、娘の喜びに満ちたポロネーズ〈私は愛らしい乙女〉や、恋敵同士の「声の決闘」的な歌の応酬(〈止まれ!無駄なことを!〉)、錯乱したエルヴィーラが虚ろに歌い始めるアンサンブル〈教会堂に参りましょう〉も旋律美の極致である。
第2幕: 冒頭のジョルジョのアリアは、訥々と語る彼の優しさが耳に沁みる一曲。続く〈狂乱の場〉は、ヒロインの純粋な哀しみをベッリーニ特有の長い旋律線で描くもの。情緒たっぷりの音運びが娘の虚ろな足取りを象徴する。一方、リッカルドとジョルジョの二重唱〈ラッパを吹き鳴らせ〉では、全曲中もっとも勇猛な歌が展開。バリトンとバスの熱唱に期待したい。
第3幕:恋人たちの〈再会の二重唱〉では、騎士の変わらぬ情熱がハイD音に結実。フィナーレでは、死を覚悟したアルトゥーロがさらに高い「超絶高音」(記譜上はF音)を放つ。しかし、幕切れの大合唱がすべてを幸せに包み込む。

あらすじ

【第1幕】
(第1場)1650年ごろのイングランド南西部、港湾都市プリマスの近郊。清教徒たちの要塞内の広い台地には、跳ね橋や城壁、塔が見え、朝日が昇ってくる。士官ブルーノ(T)と兵士たちが現れ、敵方のスチュアート王家に対する闘志を燃やす。オルガンが讃美歌のメロディを奏でると、ブルーノが〈おお、クロムウエルの戦士たちよ!〉と呼びかけ、一同に祈りを促す。舞台裏からは、清教徒軍の司令官の娘エルヴィーラ(S)、王党派の騎士アルトゥーロ(T)、清教徒軍の大佐リッカルド(Br)、エルヴィーラの叔父ジョルジョ(B)の祈りの声が響く。
皆はエルヴィーラの婚礼を祝うが、リッカルドだけは悄然と佇む。ブルーノの問いかけに、彼は「戦地に赴く前、エルヴィーラの父ヴァルトン卿(B)に彼女との結婚を承諾させたが、帰郷してみると彼女の心は騎士アルトゥーロ・タルボにあると分った。それゆえ、ヴァルトン卿からも『娘は与えられない』と断られてしまったのだ」と胸の内を語る(アリア〈ああ、永久に貴女を失ったのだ〉)
(第2場)エルヴィーラの部屋。叔父のジョルジョを相手に、彼女は「私の清らかな望みと潔白な心をご存知ですね」と語り、望まぬ相手との結婚に対する懼れを言外に伝える。するとジョルジョは「相手はアルトゥーロになる」と答え、ヴァルトン卿に事情を話して、自分の娘を、彼女が真に愛する人と結婚させるよう説得したと告げる。二人は共に喜び合う(二重唱〈貴方は私の胸に〉)
(第3場)武器の置いてある広間。到着したアルトゥーロが喜びの名旋律〈いとしい乙女よ、貴方に愛を〉を歌い上げ、人々が声を合わせる。ブルーノとヴァルトン卿が囚われの貴婦人を連れてくる。彼女に向って卿は「議会が貴方を召喚している」と告げ、娘を祝福してから出て行く。
すると、もともと王党派であり、スチュアート家への忠誠心を引きずるアルトゥーロは、死罪となるであろう彼女の運命に同情するが、その女性が実は王妃エンリケッタ(Ms)であると知って驚く。エルヴィーラが出てきて、エンリケッタに、婚礼のヴェールの形を整えたいので力を貸して下さいと頼み、自分からヴェールを王妃の頭に載せてから一旦退場する(ポロネーズ〈私は愛らしい乙女〉)。アルトゥーロはそこで閃き、ヴェールを被ったままの王妃を連れ出そうとする。すると、リッカルドが現れて剣を抜くが、止めに入った王妃の顔を目にしたリッカルドは、二人の逃亡を黙認する。
エルヴィーラが出てきてアルトゥーロを探す。ブルーノが「彼は出かけた」と告げると、二頭の馬で逃げ出す男女の姿をその場の全員が遠くに認める。エルヴィーラは突然のことに乱心し、美しいコンチェルタート〈おお、教会に参りましょう〉で悲嘆にくれる。人々は逃げおおせた二人を呪う。

【第2幕】
城内の広間。人々がエルヴィーラの憐れな様子を噂していると、ジョルジョが彼女の模様を伝えにやってくる(ロマンツァ〈ほどけた美しい髪を花で飾り〉)。正気を失ったエルヴィーラが登場、髪を振り乱し、恋人の姿を追い求めて歌ってから、錯乱状態のまま退場する(シェーナとアリア〈ここで貴方の優しい声が〉(狂乱の場))
彼女の哀れな姿を目にしたジョルジョは、二重唱〈君は君の敵を救わねばならない ~ ラッパを吹き鳴らせ〉で、アルトゥーロの出奔の理由についてリッカルドに問い質し、「君が黙っていることで、二人の犠牲者が出たのだ」と語りかけ、「私の悲しみが、君の優しい心を目覚めさせるように」と説く。それに応えてリッカルドは「私は貴方の涙に負けた」と口を開き、ジョルジョと共に「ラッパを吹き鳴らせ。勇敢に、力の限り戦おう!」と声を合わせる。

【第3幕】
エルヴィーラの館近くの庭園。アルトゥーロが現れ、敵の襲撃を逃れたことを喜ぶ。エルヴィーラの声がする。その様子を見守る彼は、ロマンツァ〈谷に走り、山に走る〉で、自分は「故国を失った流離いの男」だと独白する。再び現れたエルヴィーラの前に、彼は進み出て赦しを請う。事情を知ったエルヴィーラも誤解を解き、二人は愛の結びつきを朗々と歌い上げる(二重唱〈アルトゥーロ、あの方だわ〉)
しかし、清教徒側の指導者クロムウエルの勝利を告げる声が遠くから聴こえるので、エルヴィーラはまた乱心し始める。人々がアルトゥーロを見つけ、リッカルドが彼に「神が貴方を捕らえた」と告げる。リッカルド、ジョルジョ、エルヴィーラ、アルトゥーロは、合唱付きの四重唱で各自の心中を歌う。
そして、男たちがアルトゥーロに復讐しようとした瞬間、角笛が響き渡り、使者が現れてジョルジョに書簡を渡す。それを読んだ彼は「王家は滅びた!」と宣言。リッカルドも「罪ある者は赦された!」と声を放つ。そこで恋人たちは喜びを取り戻し、人々の歓声に包まれながら、かたく抱き合う。
(岸 純信)

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