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作品について

ヴォルフ=フェッラーリ作曲「イル・カンピエッロ」

オペラ全3幕<字幕付き原語(イタリア語)上演>

“小さな広場(カンピエッロ)”で繰り広げられる
愛と感動の喜劇オペラ

 

 

イントロダクション

 藤原歌劇団が2022/23シーズンの幕開けにお届けするのは、エルマンノ・ヴォルフ=フェッラーリ作曲の代表的なオペラ「イル・カンピエッロ」を、川崎・しんゆり芸術祭「アルテリッカしんゆり2022」参加公演としてお届けします。
 舞台は水の都ヴェネツィアの広場。オペラ「イル・カンピエッロ(小さな広場)」は、同地の劇作家カルロ・ゴルドーニの台本に基づいた作品で、上演機会は決して多くありませんが、登場人物たちの他愛のないやりとりを美しいアンサンブルで描いたアットホームな作品として親しまれています。
 今回、有名な別れの歌〈さようなら愛しのヴェネツィア〉を歌うガスパリーナを演じるのは、中井奈緒(4/22&24)と中畑有美子(4/23)という二人の若手ソプラノを配しました。テノールが叔母さん役を務める二役、ドナ・カーテとドナ・パスクワには、ベテランテノールの角田和弘(4/22&24)と山内政幸(4/23)、持木弘(4/22&24)と所谷直生(4/23)がそれぞれ務めます。抱腹絶倒の演技をどうぞご期待ください。その他、歌唱演技を兼ね備えた藤原歌劇団を代表する歌手のアンサンブルは必見です。指揮は、藤原歌劇団に初登場となる時任康文が、既に共演を重ねているテアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラとのコラボで初めてオペラ作品へ挑みます。演出は、世界の最前線で活躍しヴェネツィア出身でもあるマルコ・ガンディーニによる新制作です。同地の方言「ヴェネト語」で歌われるこの「イル・カンピエッロ」。ガンディーニのディクション(言語指導)によって、ヴェネツィアの風薫る国内最高水準の公演をどうぞお楽しみください。

見どころ・聴きどころ

 物語は常に小さな広場が舞台。第1幕ではまず、朝もやに煙る水の都の様子を、オーケストラが〈さようなら愛しのヴェネツィア〉の旋律で柔らかく表現。続いて、ガスパリーナのリズミカルな小アリア〈今日は素敵な日〉と、別の娘ルシェータの小間物屋の若主人への恋の歌〈アンゾレート、私のアンゾレート〉が続く。また、年下のニェーゼもモノローグ〈私って結婚したいのかな?〉を悩まし気に歌うなど、娘たちの個性が爽やかに表出する。
 第2幕では騎士アストルフィが食事を振舞う様子が〈バレエ〉で描かれ、歌ではアンゾレートから口を開くアンサンブル〈ソル、ソル、ソル〉(「そうそう、その通り」といった囃し歌)を皆が受け継ぎ、二人のおかみさん、ドナ・カーテとドナ・パスクア(共にテノールの女装役)も声を合わせ、一同を楽しい踊りに導く。
 第3幕では、恋人が浮気したと勘違いしたアンゾレートが別の青年ゾルゼートに濡れ衣を着せたので、彼を愛するニェーゼが怒りだし、結果、青年同士の大喧嘩に発展。ゾルゼートの母オルソラが必死に止めるさまがユーモラスに描かれる。そして、ガスパリーナのソロ〈さようなら愛しのヴェネツィア〉が郷土愛でみなを一つにする。

あらすじ

第1幕 18世紀中ごろ。ヴェネツィアの小広場(カンピエッロ)は、人々が集う賑やかな場所。早朝、娘ガスパリーナ(S)はテラスで小アリア〈今日は素敵な日〉を歌う。通りがかった騎士アストルフィ(Br)はナポリからの旅行者。彼女の美しさに目をとめる。
次に、年頃のルシエータ(S)が姿を見せ、小間物屋の青年に呼びかける恋の歌〈アンゾレート、私のアンゾレート〉を歌う。すると、騎士が彼女に気づき、先ほどの娘かと迷うものの別人とわかり、それでも秋波を送る。その様子をアンゾレート(B)本人が目撃。アストルフィが「小間物屋さんからなんでも買いなさい。代金はこちらで持つ」とルシエータに呼びかけると、彼女は急いで外に出るが、先に出てきた年下の娘ニェーゼ(S)が「買い物がしたい」とアンゾレートを呼びとめ、恋人の態度に怒った彼もニェーゼの家にそのまま入る。
 入れ替わりになったルシエータは、アンゾレートが居ないので不思議がる。ルシエータの母ドナ・カーテ(T:女装役)も登場。一方のニェーゼは騎士に「代金は自分で払います」と告げ、品物が売れたアンゾレートにはルシエータが「なんで私のところを先にしないの!」と怒りをぶつけるので恋人たちは喧嘩に。
 事の次第を見て取ったアストルフィは、ルシエータに指環を与えようとするが母親が代わりに受け取る。みなが去った後、ドナ・パスクア(T:女装役)が掃除を始める。彼女はニェーゼの母であり、隣家の女性オルソラ(Ms)から「うちの息子のゾルゼート(T)とお宅の娘を結婚させては?」と尋ねられるので、彼女の家に上がり込む。
 ニェーゼ当人が出て来てモノローグ〈私って結婚したいのかな?〉を歌い、幼馴染のゾルゼートがやっぱりいいかしらと独白。しかし、素直になれないので、姉貴分のルシエータがゾルゼートに「彼女は貴方が好きよ」と教えてやる。しかし、そのやりとりをアンゾレートが目撃して勘違い。彼はゾルゼートに喰ってかかる。
 騒ぎが鎮まると、ガスパリーナが現れる。アストルフィは彼女に話しかけ、互いの身の上を明らかに。二人は心惹かれ合う。

第2幕 間奏曲に続いて小広場。みながコインを探すゲームに熱中していると、ガスパリーナの伯父ファブリーツィオ(B)が「うるさい!」と一喝。アストルフィも出て来る。アンゾレートが通りがかり、ルシエータに結婚指輪を贈りたいと話すので一同は落ち着く。アストルフィが「パーティーの費用を出そう」と告げ、皆は食堂に行くが、ガスパリーナは「伯父の赦しが無いと行けませんの」と断る。宴の様子はバレエが表現。余りに騒がしいのでアストルフィは辟易し、テラスに居たガスパリーナに話しかける。
 そこにファブリーツィオが登場。アストルフィが挨拶すると、彼も身の上話をして「決闘騒ぎで弟が故郷のナポリを離れ、ヴェネツィアで結婚し子供を儲けた。それがガスパリーナだ」と告げる。アストルフィは、ファブリーツィオの名が宝くじの当選者として出ていたと思い出し、「姪と結婚すれば持参金が出るぞ!」と考える。
 酔った人々が出てきて騒ぎに。アストルフィは高くついたと愚痴るが、ガスパリーナには早速求婚。人々は気分が良いまま、アンサンブル〈ソル、ソル、ソル〉を口々に歌って賑やかに幕を閉じる。

第3幕 間奏曲に続いて小広場。騒ぎを嫌って引っ越しを始めたファブリーツィオを前に、アストルフィが「姪ごさんと結婚させてくれ」と持ち掛ける。彼が実は金欠の男だと知るファブリーツィオは、真意を見極めるべく、家に呼び込む。
 アンゾレートはルシエータの居場所を探す。そして、彼女がゾルゼートと一緒にいるのではとまた誤解して、出てきたルシエータに殴りかかる。彼女はたまたまゾルゼートの母オルソラの家にいただけなので、びっくりして泣き出す。それでもルシエータは「私はアンゾレートのことが好きなのよ」と言うので、彼も涙ぐみながら謝り、「悪いのはゾルゼートさ。ろくでなしだから」と言って恋人の手を取る。
 しかし、その様子を目にしたニェーゼは、ゾルゼートが濡れ衣を着せられたと気づき、怒って告げ口をする。そこでゾルゼートもかっとなり、石をドナ・カーテの家に投げ込むと、彼女の頭を直撃。アンゾレートがゾルゼートと大喧嘩になりそうなので、女たちは必死に止める。アストルフィが「いい加減にしないか!」と𠮟りつけ、青年たちが仲直りするとガスパリーナとアストルフィの結婚が発表される。ガスパリーナは「遠くに行きます」と皆に告げ、別れの歌〈さようなら愛しのヴェネツィア〉を歌いだし、一同が彼女の歌声に和すところで幕となる。

(岸 純信)

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