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作品について

團伊玖磨 作曲 木下順二 作

オペラ全1幕

イントロダクション

オペラ「夕鶴」は、木下順二の名作戯曲がそのまま團伊玖磨によりオペラ化された作品で、1952年の初演から800回以上上演され、今も高い人気を誇る日本オペラのひとつとして全国で上演されています。広く親しまれている民話「鶴のおんがえし」に基づくストーリーと美しい日本語台本、團伊玖磨の抒情性あふれる音楽のみならず、現代社会に対する深い洞察に満ちたその内容は、観る人たちに大きな衝撃と感動を呼び起こします。
2013年3月、兵庫県立芸術文化センターにて新制作された今回のプロダクションは岩田達宗による演出で、現実と異界が同居する室内劇として新しい息吹を吹き込んだものであり、木下順二原作の本質を浮かび上がらせたプロダクションとして高い評価を得て、客席はオペラ「夕鶴」の終演と同時に深い感動に包まれました。
この度、日本オペラ協会では2016年の「天守物語」に続き、兵庫県立芸術文化センターとの共同プロダクション公演として、この「夕鶴」東京公演を行うこととなりました。指揮にはオペラ指揮者としても益々の活躍を続ける園田隆一郎、つう役にはプリマドンナ佐藤美枝子が満を持して臨む他、新鋭ソプラノとして活躍中の伊藤晴、与ひょう役には定評ある中井亮一と中鉢聡を配し、その他、柴山昌宣、清水良一、泉良平、豊島雄一ら芸達者な配役でお届け致します。日本オペラ協会では名作オペラ「夕鶴」を老若男女多くの皆様にご鑑賞いただき、心の涵養に寄与できればと希っております。

見どころ・聴きどころ

オペラ「夕鶴」は日本オペラ作品の中で最も上演回数が多く、ポピュラーな作品です。「鶴のおんがえし」に基づいた物語は誰にでもわかりやすく、しかも雪国の幻想的な雰囲気や美しい情景の内に人間のもつ良心と欲心の両面が描かれており、気の弱い愚かな人が甘い誘惑に乗ってしまうことにより、本当に大切な物を失ってしまう、という誰もが共感できるストーリーです。また、團伊玖磨の音楽は流麗で、美しくごく自然に日本語のもつイントネーションを損なうことなく歌いあげています。
聞きどころとしては、先ずつうのアリアが挙げられます。つうにはアリアにあたる場面が三ケ所あり、与ひょうが運ずや惣どにそそのかされているのを見て歌う「与ひょう、私の大事な与ひょう…」、家の中で寝てしまった与ひょうの傍らにある巾着袋に入っているお金を見て歌う「これなんだわ、みんなこれのためなんだわ、お金?お金?」そして約束を破って機を織っているところを覗いた与ひょうへ最後に歌う「与ひょう、からだを大事にしてね、いつまでも、いつまでも、元気でいてね…」、その他にも子供たちの登場場面、つうと与ひょうの愛の二重唱、誘惑に負けた与ひょうがつうに機織りを強要するシーン、ついに決心したつうが機を織る場面など、人間の心の葛藤がそのままオペラの場面となって綴られています。どうぞお楽しみに!

あらすじ

雪深い村はずれの一軒のあばら家。以前、雪深い山の中で傷ついて倒れていた鶴を助けてやったことのある貧しい与ひょうのもとに、美しい女房のつうがやってくる。つうは与ひょうを喜ばせようとこっそり夜中に一枚の布を織って彼に渡すが、それが都で大評判になったので、金儲けをたくらむ惣どと運ずは与ひょうをそそのかし、つうに次々と布を織らせる。布を織るたびにしだいにやせ衰えていくつう。やがて織っているところを与ひょうにのぞかれ、鶴であることを知られたつうは、もはや人間に姿を変えることもできずに夕空の彼方へ飛び去っていく。

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