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作品について

ロッシーニ作曲

オペラ全2幕 字幕付き原語上演

イントロダクション

ロッシーニ没後150年となる2018年、藤原歌劇団は川崎・しんゆり芸術祭参加公演として「ラ・チェネレントラ」を上演します。今回のプロダクションの演出は、2016年7月の日生劇場での「ドン・パスクワーレ」の舞台で大好評だったイタリアのフランチェスコ・ベッロット。彼が2008年にベルガモのテアトロ・ドニゼッティにおいて子供向け公演のために「小さなチェネレントラLa piccola cenerentola」と題して演出した縮小版オペラをベースに、まるで絵本から飛び出してきたようなファンタジー溢れる世界をテアトロ・ジーリオ・ショウワに作り上げます。
指揮はロッシーニの大家、故アルベルト・ゼッダの薫陶を受け、オペラ指揮者として大活躍する園田隆一郎が務めます。
終幕の華やかなアリアで知られるタイトル・ロールのアンジェリーナには、向野由美子(4/28)と、今回が主役デビューとなる但馬由香(4/29)。高音を駆使する難しいアリアを歌いこなす王子ラミーロには、ペーザロのロッシーニ・アカデミーで「ランスヘの旅」のリーベンスコフ伯爵役で注目を集めた二人、小堀勇介(4/28)と山本康寛(4/29)。王子になりすます家来のダンディーニに押川浩士(4/28)と、今回大抜擢の市川宥一郎(4/29)。賢者アリドーロに伊藤貴之(4/28)、上野裕之(4/29)。そして、娘たちのどちらかを王子に嫁がせようと躍起になるブッフォの腕の見せどころであるドン・マニーフィコには、ともに芸達者な谷友博(4/28)と柴山昌宣(4/29)。意地悪なアンジェリーナの姉たちクロリンダとティーズベには、光岡暁恵、米谷朋子(4/28)、横前奈緒、𠮷村恵(4/29)らを配しました。華やかなアリアだけでなく、面白いアンサンブルも満載の「ラ・チェネレントラ」をどうぞお楽しみに!

見どころ・聴きどころ

ラミーロ王子(T)のアリア「そう、誓って彼女を見つけ出す」、フィナーレを飾るアンジェリーナ(Ms)のシェーナ「苦しみと涙のために生まれ」が知られていますが、このオペラ・ブッファには、六重唱の「あなたですね?」をはじめとした、ロッシーニならではの言葉遊びや思わず笑ってしまう風刺の効いたやり取りが満載です。
また他この物語を実質的に進める役目を担う男声の3人にも偽王子のダンディーニ(Br)がいかにも王子らしく振舞って歌う「四月の日々に飛ぶ蜜蜂のように」、哲学者アリドーロ(Bs)の落ち着いた「深い神秘に支配される天の」、酔っ払ったドン・マニーフィコ(Br)の「私、ドン・マニーフィコは」など、それぞれのキャラクターを活かした聴かせどころのアリアがあります。

あらすじ

【第1幕】
むかし、むかし、あるところにドン・マニーフィコという没落男爵がおりました。彼には、クロリンダとティーズベという2人の娘がありましたが、実はもうひとり、既に亡くなった後妻の連れ子であるアンジェリーナという美しい娘がおりました。しかし、意地の悪い姉たちは、アンジェリーナのことをまるで使用人のように扱い、「チェネレントラ(灰にまみれた娘)」と呼んで蔑んでおりました。気立ての良いアンジェリーナは、そんな環境でも善良さを失わず健気に生きているのでした。

ある日、そのマニーフィコの館に、ひとりの物乞いが「食べ物をお恵みください」と現れます。姉たちは「そんなうすら汚い者はさっさと叩き出しておしまい!」と言いますが、アンジェリーナは隠れるようにして彼にパンとコーヒーを与えます。実はその物乞いは、サレルノの王子ドン・ラミーロの教育係であり、哲学者のアリドーロの変装なのでした。
アリドーロが去った後、お城からの使者たちが「花嫁を選ぶために、王子様がこれからおいでになられます」と知らせに来ます。それを聞いたクロリンダたちは大騒ぎ。チェネレントラにあれこれ用を言いつけて、美しく着飾ることに夢中になります。
その騒ぎで起こされた父親のマニーフィコが寝室から不機嫌に出て来ますが、娘たちから話を聞いて、「これは没落した家を立て直す千載一遇のチャンス!」とばかりに張り切り、娘たちを叱咤激励するのでした。カヴァティーナ「わしの娘たちよ」

そこに家来の姿をした王子ドン・ラミーロが、本来の姿に戻ったアリドーロに導かれてやって来ます。姉たちの部屋から出て来たアンジェリーナは、見知らぬ素敵な男性がそこに立っていることに驚き、ラミーロ王子もまた粗末な身なりながら美しいアンジェリーナを見て、ふたりは互いに惹かれ合います。二重唱「何かわからない甘美なものが」
立派な身なりのダンディーニが現れます。(ダンディーニは本当は王子の家来なのですが、今日は王子の役を張り切って演じています。)偽王子がマニーフィコと娘たちをお城の舞踏会に招待します。カヴァティーナ「四月の日々に飛ぶ蜜蜂のように」
それを聞いたアンジェリーナもマニーフィコに「お父様、1時間でもいいですから、どうか私も連れて行ってください」と懇願しますが、マニーフィコは「お前は留守番だ!」とそれをにべもなく拒絶するのでした。それを聞いたアリドーロが「この家には3人の娘があると書類には書いてあるが?」とマニーフィコに問いますが、彼は「その娘はとうに亡くなりました」とうそぶき、アンジェリーナに「余計なことを言うな」と脅すようにして口止めをするのでした。

全員がお城に向かい、アンジェリーナひとりが家に寂しく残されます。そこにアリドーロが再び現れて、「決して自分の身分を明かしてはならない」と言い聞かせた上で、彼女をお城へと送り出すのでした。アリア「深い神秘に支配される天の」

ラミーロ王子の城では「酒蔵の責任者に任命された」というマニーフィコが、ワインを30種類も試飲して、すでにほろ酔い気分。「これから15年間、甘口ワインに水を一滴も混ぜてはならぬ」という、訳の分からぬ命令を町中に貼り出すように王子の家来たちに命じております。アリア「私、ドン・マニーフィコは」
一方、クロリンダとティーズベと話をしたダンディーニは、王子に「どちらの娘も高慢で、性格が悪いですよ……」と耳打ちします。

そこに美しいドレスをその身にまとい、ヴェールを被ったアンジェリーナが姿を現します。それを見た姉たちは「背格好がうちのチェネレントラとそっくりだわ」と囁き合います。
ラミーロ王子は、彼女の声からその美女が、あの粗末な身なりをした娘であることに気がつくのでした。

【第2幕】
マニーフィコは、あのどこの誰とも分からぬ美しい姫に王子の花嫁の座を持っていかれるのではないかと気が気ではありません。しかし同時に、ふたりの娘たちに「どちらが王子に嫁いでも、この父のことを忘れるでないぞ」と念を押すことも忘れません。アリア「娘のうちのどちらでも」

王子の意を汲んだダンディーニが、アンジェリーナを追ってやって来て、彼女にプロポーズします。しかしアンジェリーナはそれを断って、「私がお慕いしているのは、あなた様の家来です」と答えます。そして家来の姿のままのラミーロ王子に、「私のことを探し出して、本当の私のことを知ってください。そしてそれでもよろしければ、私のことを花嫁にしてください」と言って、両腕にはめていた腕輪の片方を彼に渡して去って行きます。その姿を見送ったラミーロ王子は「必ず探し出して見せるとも!」と決意を語るのでした。アリア「そう、誓って彼女を見つけ出す」

王子役を御免となったダンディーニが、家来の姿に戻って「なかなか面白い経験だった」とひとりごちているところに、マニーフィコが揉み手をしながら寄って来て「我が娘のどちらを花嫁になさるおつもりでしょうか」と尋ねます。ダンディーニは「あなたに重大な秘密をお教えしましょう」と言い、実は自分はただの家来に過ぎないことを明かします。二重唱「重大な秘密を」
本当のことを知ったマニーフィコは、自分の娘を王子に嫁がせるという夢がもろくも崩れ去ったことを知り、城から追い立てられるようにして去って行くのでした。
その様子を見ていたアリドーロは、「あとは彼女の家の前で王子の馬車をひっくり返せばいいだけだな」とひとりごとを言って去ります。

再びここはマニーフィコの館。アンジェリーナが粗末な身なりで悲しげな歌を口ずさみながら働いています。カンツォーネ「昔ひとりの王様がいました」
お城から帰って来た姉たちはアンジェリーナがいつも通りに働いている姿を見て「あれはやはり他人の空似だったのね」と言い合っております。

外は激しい嵐。そこにダンディーニが、「王子様の馬車が嵐の中ひっくり返ってしまった」と今度は本来の家来の姿で入って来ます。その後からラミーロ王子がやって来て、「替えの馬車が来るまでここで待たせてくれまいか」と言います。マニーフィコは、ここで初めて本物の王子が誰であったのかを知るのでした。
そこにアンジェリーナが現れます。ラミーロ王子はすぐに彼女の片腕に腕輪を見つけて、ふたりは再会を喜び合いますが、マニーフィコと姉たちは、何が起きているのかがすぐには理解できず、混乱するばかり。六重唱「あなたですね?」
ラミーロ王子が「アンジェリーナを花嫁にする」と宣言し、マニーフィコやクロリンダたちのアンジェリーナを蔑む言動に怒り、アンジェリーナと一行を連れて去って行きます。
残されて呆然とするマニーフィコたちの前にアリドーロが現れ、「あなた方は私が物乞いの姿でここへ来たときに手酷く追い払ったが、彼女は優しくもてなしてくれた。このままではマニーフィコは、アンジェリーナの母親の遺産まで使い込んだ罪で、館も全て没収されることになるでしょう。それを取るか、アンジェリーナに赦しを乞うかは、あなた方がお決めなさい」と静かに語りかけたのち、去って行きます。それを聞いたクロリンダは「私は彼女に許しを乞うわ」と即座に答えアリア「不幸な私!」、ティーズベも「運命には逆らえないわ」と呟くのでした。

ここは王子の結婚式を祝うお城の大広間。人々がお祝いの言葉を口にする中、ラミーロ王子とアンジェリーナが現れます。おずおずと赦しを乞うためにふたりの前に進んだマニーフィコと姉たちのことをアンジェリーナは温かく抱擁します。そして「彼らを赦すことで、私の復讐は果たされるのです」と王子に語りかけるのでした。
アンジェリーナがこれまでの辛かった半生と今の幸せを歌います。シェーナ「苦しみと涙のために生まれ」
人々がふたりの結婚を祝福する中、オペラは幕を閉じます。めでたし、めでたし。
(河野典子)

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