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作品について

ロッシーニ作曲

オペラ全1幕 字幕付き原語(イタリア語)上演

イントロダクション

「ランスへの旅」は、本来はロッシーニがシャルル十世の戴冠祝賀行事の一環として作曲した〈カンタータ〉。当時のパリ・イタリア座の主要メンバーが総出演で歌った、いわばスター歌手によるガラ・コンサートのような作品です。作曲から159年経った1984年にペーザロ・ロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルにおいて〈オペラ〉として復活上演されました。今回は藤原歌劇団、東京二期会、新国立劇場の共催によって上演されます。指揮は園田隆一郎、2015年に好評を得た松本重孝の舞台です。
ローマの著名な即興詩人コリンナには、砂川涼子(9/5&7)光岡暁恵(9/6&8)、ポーランド出身のメリベーア公爵夫人に中島郁子(9/5&7)富岡明子(9/6&8)。おしゃれが生き甲斐のフランスのフォルヴィル伯爵夫人に佐藤美枝子(9/5&7)横前奈緒(9/6&8)、このオペラの舞台である宿屋「金の百合亭」の女主人コルテーゼ夫人に山口佳子(9/5&7)坂口裕子(9/6&8)。フランスの騎士ベルフィオーレには中井亮一(9/5&7)糸賀修平(9/6&8)。ロシアの将軍リーベンスコフ伯爵は、小堀勇介(9/5&7)山本康寛(9/6&8)、イギリスの大佐シドニー卿に伊藤貴之(9/5&7)小野寺光(9/6&8)、骨董収集家のドン・プロフォンドに久保田真澄(9/5&7)押川浩士(9/6&8)、音楽好きのドイツの少佐トロンボノク男爵に谷 友博(9/5&7)折江忠道(9/6&8)、スペイン大公ドン・アルヴァーロに須藤慎吾(9/5&7)上江隼人(9/6&8)、医者ドン・プロデンツィオに三浦克次(9/5&7)田島達也(9/6&8)ほか、ヴェテランから今回が大抜擢となる若手まで、現在日本で望めるベルカント・オペラのベストメンバーとも言える歌手を揃えて、新国立劇場からお送りいたします。

見どころ・聴きどころ

スター歌手がそれぞれ見せ場のアリアを持つこの作品。たわいのない物語ながら、全編が「聴きどころ」といっても過言ではありません。その中でもフォルヴィル伯爵夫人のソプラノ・レッジェーロの超絶技巧による大アリア「私だって出発したいですわ」、テノールの高音の美声が光るリーベンスコフ伯爵の「なんと不実な女だ」、バッソ・ブッフォの表現力の見せどころであるドン・プロフォンドの「私、ドン・プロフォンドは」、バッソ・カンタービレの朗々としたシドニー卿の「なぜ彼女に出会ってしまったのだろう」、そして極め付けは終盤にローマの即興詩人コリンナが吟ずる「黄金の百合が落とす快い影に」など目白押し。また、中盤に置かれた華やかな「ああ、なんという思いがけないことが」は、歌を知り尽くしたロッシーニならではの14声による大コンチェルタートとなります。

あらすじ

ここはフランス有数の温泉保養地プロンビエールの宿である〈金の百合亭〉。
宿はランスで行われるシャルル十世の戴冠式に向かおうとする各国の貴族たちで賑わっている。
宿の女主人コルテーゼ夫人が「私もできることならば、ランスに行きたいものだわ」と言いながら現れ、従業員たちにくれぐれも粗相のないようにと命じている。「美しい光に包まれて」
そこにファッションが命のフランスのフォルヴィル伯爵夫人が、小間使いのモデスティーナを探しに来る。「最新の流行の服なしで、祝典に向かうなんて」
そこに彼女のいとこドン・ルイジーノがやって来て「あなたのドレスを積んだ馬車が転覆して、荷物がダメになった」と伝える。彼女がショックのあまり倒れるので、居合わせた人々は大騒ぎ。医者のドン・プルデンツォが「これは大変!ご臨終です」と宣言するが、フォルヴィルはすぐに目を覚ます。そして「最新モードを身につけずに戴冠式に行くなんて私にはできないわ!」と大仰に嘆くが、モデスティーナが荷物の中で唯一無事だった最新流行の帽子を持ってくると、彼女はさっきとは打って変わって大喜びする。「私だって出発したいですわ〜神様、感謝いたします」
周囲の者たちは彼女のコロコロ変わる機嫌に呆れて、ドイツのトロンボノク男爵を残して去っていく。トロンボノクはフォルヴィルの異様なファッションへの執着を笑う。「頭のおかしな連中を入れておく檻を地球と呼ぶ」
そこに外出先から戻ってきた骨董収集家のドン・プロフォンドが、皆の会計係をしているトロンボノクに旅費の分担金を支払う。「私の分をお支払いします」
スペイン大公ドン・アルヴァーロがポーランド出身のメリベーア公爵夫人を伴って現れ、彼女のことを周囲の人々に紹介する。「この美しい優雅な貴婦人は」
メリベーアも男たちに愛想を振りまきながら挨拶する。「このような高貴な方々と」
その様子に、ロシアのリーベンスコフ伯爵は心穏やかではいられない。リーベンスコフとアルヴァーロのメリベーアを巡る恋の鞘当てが始まる。「なんと不実な女だ」
そこにトロンボノクがやってきて「間もなく出発だ」と告げる。コルテーゼ夫人は迎えの到着が遅いことを訝る。いきり立つリーベンスコフほか、そこにいた人々がそれぞれの心情を吐露する。六重唱「私はいかなる危険も恐れない」

そこにローマの女流即興詩人コリンナの美しい詠唱が聴こえてきて、皆がそれに聴き惚れる。「いとしいハープよ、私の信頼する友」
コリンナに恋するイギリスの軍人シドニー卿が現れて、武骨な彼の不器用な恋の悩みを語る。「なぜ彼女と出会ってしまったのだろう」
村娘たちから花を買い求めた彼は、コリンナの部屋の前にその花束をそっと置いて立ち去る。
ドン・プロフォンドがコリンナに手紙を渡す。そこにはギリシャが独立できそうだと書かれており、ギリシャの孤児である侍女デリアはそれを聞いて喜ぶ。コリンナがそっと置かれた花束を見つけて、その送り主に思いを馳せていると、そこにフランスの女たらしの騎士ベルフィーレが現れて、大仰な言葉で彼女を口説く。コリンナは彼を相手にせず、彼を軽蔑しつつ去っていくが、ベルフィオーレはそんなことを感じもしない。二重唱「あなたの神々しいお姿に」
ドン・プロフォンドがメンバー全員の荷物のリストを作って、ランスに向かうことを楽しみにしている。「私ドン・プロフォンドは」
そこにフォルヴィルがベルフィオーレを探しにくる。ドン・プロフォンドは嘘もつけず「ベルフィオーレは、今コリンナに詩のレッスンを受けています」と答える。その言葉にフォルヴィルは、またベルフィオーレが他の女性を口説いているのだと察して怒る。出発を控えた人々が集まってくる。ところがそこに連絡係のゼッフェリーノが飛び込んできて、「あちこち探しましたが馬も馬車も出払っていてみつかりません。みなさんにはランス行きを断念していただくよりありません」と言う。それを聞いた全員が愕然とする。そこにコルテーゼ夫人がパリにいる夫からの「ランスでの戴冠式のあとパリでも大掛かりな戴冠の祝典が行われる」という手紙を持ってくる。それを聞いたフォルヴィルが「パリは私の街。みなさんをご招待しますわ」と言い、全員がそれに大喜びする。十四重唱「ああ、なんという思いがけないことが」
彼らは、翌朝乗合馬車でパリに向かうことにして、今夜は豪勢な晩餐会を開くことで一致する。トロンボノクが、メリベーアとリーベンスコフに仲直りを勧め、リーベンスコフは嫉妬から彼女を誤解したことを詫び、メリベーアがそれを赦す。「気高い魂に、おお、神よ」
晩餐会が始まる。まずトロンボノクが進み出て、乾杯の音頭を取り、ドイツ国歌に合わせてシャルル王を賛美する。「今こそ王が民衆を束ね」
次にメリベーアがポロネーズで騎士たちを賛美する。「勇敢な戦士たちよ」
続いてリーベンスコフが、昔のロシア皇帝の帰還を祝ったメロディに乗せてシャルル王を讃える。「名誉、栄光、そして最大の敬意を」
ドン・アルヴァーロが、スペインのメロディに乗せて「崇高な指導者に敬意を」を歌う。
シドニー卿がイギリス国歌に乗せて「金の樹木の大切な芽を」を歌う。
続いて、フォルヴィルとベルフィオーレが歌う。二重唱「新しいエンリーコの母君が」
ドン・プロフォンドとコルテーゼ夫人が、夫人の出身地であるチロルのリズムで、新王のこれからを祝福する。二重唱「より活気ある、豊かな」
最後にコリンナの番になる。彼女に詠じてもらいたい即興詩のテーマを全員がそれぞれ書く。そしてくじ引きによって選ばれたテーマは「フランス王、シャルル十世」。コリンナが王を讃える即興詩を見事に詠じる。「黄金の百合が落とす快い影に」
全員が新国王を讃えて歌い、幕となる。全員合唱「栄光あれ、尊敬する神聖なる王よ〜フランスと勇敢な国王に栄光あれ」 (河野典子)

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