作品について
美内すずえ 原作・脚本
寺嶋民哉 作曲
イントロダクション
《ガラスの仮面》は、1976年の初刊から現在に至るまで49巻が出版され、累計発行部数が5000万部を超えるコミックスの大ヒット作で、美内すずえがこの作品の登場人物に語らせた魂の言葉は多くの愛読者たちの胸に深く刻まれています。とくに多感な少年少女時代にこの本に触れた人たちにとっては、その後の“人生のバイブル的な存在”であり続けています。平凡な一人の少女が才能を見出され女優として成長していく物語で、その最後の課題となるのが幻の名作と称される作中劇「紅天女」です。かつて不世出の大女優が演じた「紅天女」という作品の価値と役への憧れによって、競い合う二人の少女を女優として成熟させていくのです。
「紅天女」を題材に原作者、美内すずえが監修及び脚本を担当、作曲は2005年「半落ち」で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞した寺嶋民哉が担当し、これまでのオペラの概念を覆すような今までに無い漫画と歌劇のコラボレーションを実現させます。主役の阿古夜×紅天女(S)には、オペラ界で輝きを放つソプラノ小林沙羅と、ミュージカルを中心に活躍中の笠松はる、仏師・一真(T)にはロッシーニ作品で確実なテクニックを身につけている山本康寛と、イタリア声楽コンコルソ・シエナ大賞等を受賞している海道弘昭、その他全役オーディションを勝ち抜いた実力派キャストでお届けいたします。指揮は国際的にも活躍する園田隆一郎、演出はこれまで多くの作品を手がけた馬場紀雄、また特別演出振付として人間国宝の梅若実玄祥をお招きします。
「紅天女」を通して自然と人間の共生と平和への祈りを伝え、また“美しい調和”を意味する令和の時代を迎え、「紅天女」の舞台はまさに時代の真骨頂となるでしょう。
あらすじ
南北朝の時代、国は二つに分かれて争い、天変地異が続き人心は乱れている。南朝の帝は天女の像を作り、世を鎮めようと仏師を探させる。見出された仏師・一真は逃走するがやがて天命を知り、天女像を作るため梅の木を探し歩く道中、誤って谷底へ。記憶を失った一真は不思議な娘・阿古夜に助けられ、紅谷の村に身を寄せる…。世の乱れを嘆く精霊達、南北朝の人びとの想いが渦巻く中、愛し合う阿古夜と一真の魂が、一つの運命に結びつけられてゆく。