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作品について

ヴェルディ作曲「リゴレット」

全3幕 字幕付き原語(イタリア語)上演

イントロダクション

藤原歌劇団は、2020年2月に新制作のヴェルディ「リゴレット」を東京文化会館(2/1,2)と愛知県芸術劇場(2/8)で上演します。
「リゴレット」が初演されたのは1851年。この作品以降、ヴェルディは「イル・トロヴァトーレ」「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」といった、巧みな心理描写とそれを見事なまでに音楽に写し込んだ傑作オペラを次々と発表していきます。
今回のタイトルロールには、須藤慎吾(2/1,8)と上江隼人(2/2)というこれからの日本におけるヴェルディ・バリトンの双璧となるべきふたりを配し、マントヴァ公爵には笛田博昭(2/1,8)と村上敏明(2/2)、ジルダに佐藤美枝子(2/1,8)、光岡暁恵(2/2)という「イタリアオペラの藤原歌劇団」の名に恥じぬ、鉄壁とも言うべき主役陣を揃えました。
そのほかにもスパラフチーレに伊藤貴之(2/1,8)と豊嶋祐壹(2/2)、マッダレーナに鳥木弥生(2/1,8)と米谷朋子(2/2)、ジョヴァンナに河野めぐみ(2/1,8)二瓶純子(2/2)、モンテローネ伯爵に泉良平(2/1,8)村田孝高(2/2)らが出演します。
指揮は柴田真郁、演出に松本重孝。管弦楽は日本フィルハーモニー交響楽団(東京)/セントラル愛知交響楽団(愛知)。
藤原歌劇団がお送りする、正統派の「リゴレット」をどうぞご堪能ください。

見どころ・聴きどころ

女好きのマントヴァ公爵が歌う「あれか、これか」「頰に涙が」「女心の歌」は、どれもよく知られたアリア。ジルダのアリア「慕わしい人の名は」は、ソプラノ・リリコ・レッジェーロがコンサートでも好んで採り上げる一曲。そして主役リゴレットの「悪魔め、鬼め」と、ジルダとの二重唱から続く「そうだ、復讐だ」は、この役最大の聴かせどころとなります。また第3幕のジルダ、マッダレーナ、マントヴァ公爵、リゴレットによる四重唱「美しい愛の娘よ」の美しさも必聴です。

あらすじ

【第1幕】
マントヴァ公爵邸の広間では宴会が開かれている。公爵はボルサに「ここ3ヶ月ほど教会で見かける娘に興味がある」と言いつつ、次から次へと女たちを口説いて回る。「あれか、これか」
チェプラーノ伯爵夫人を夫の前で誘惑するに至って伯爵は怒り狂うが、そこに宮廷の道化リゴレットが割って入り、彼をからかって気を外らせようとする。
マルッロがやってきて廷臣の仲間たちに「リゴレットに愛人がいるらしいぞ」と伝る。普段から彼の存在と毒舌を苦々しく思っている彼らは「その愛人を誘拐してやろう!」と相談する。
宴もたけなわの頃、娘を公爵に傷ものにされた老モンテローネ伯爵が公爵に怒りをぶつけに現れる。それを揶揄したリゴレットに伯爵の怒りは倍増して、「父親の悲しみをあざ笑う者は、呪われるがいい」とリゴレットたちに向かって叫ぶ。 公爵はそれを笑い飛ばすが、リゴレットは蒼白になって、その言葉に怯える。

リゴレットが薄暗い道をひとり、娘ジルダのいる家に向かっていると、路地の暗がりから殺し屋のスパラフチーレが現れる。「殺したい人間がいるならば、安い値段でお引き受けしますぜ」と囁きかけられ、リゴレットは思わず「貴族を殺すのはいくらで引き受けるのだ」と尋ねてしまう。しかしすぐ我に返り「用はない!」と追い払おうとする。スパラフチーレは「夜はいつもこの辺りにいますぜ、俺の名はスパラフチーレ」と言いながら去っていく。リゴレットは「奴は剣で人を殺し、俺は舌鋒で人を貶める。同じようなものだ」と自嘲気味に語る。「俺たちは同類だ」

家に着いたリゴレットだが、モンテローネの呪いの言葉が頭から離れない。
リゴレットの愛娘ジルダは、父の帰還を喜ぶ。ジルダは父に、母親の名前を尋ねるが、父はそれどころか自分の名前すら娘に語ろうとしない。自分が宮廷の道化であることを娘に悟られまいとしているのだ。「教会に行く以外、ずっと家にいるので、外出してみたい」とジルダは言うが、リゴレットはすかさず「絶対にだめだ」と答える。リゴレットはジルダの侍女であるジョヴァンナに「だれも怪しい人間は見ていないか」と尋ねる。彼女は否定するが、実はマントヴァ公爵に頼まれてすでに彼を邸内に入れている。物陰からリゴレットたちの様子を見ている公爵は、ジルダがリゴレットの娘であることに驚く。
リゴレットが再び出かけたあと、ジルダが教会で見かけた素敵な若者が自分の後をつけてきたことを思い出していると、目の前にその若者が姿を現す。学生姿の公爵が彼女に愛を告白し、ジルダも彼に惹かれていることを告白する。ジョヴァンナが「誰かがやってくる」と知らせるので、公爵は「私はグアルティエール・マルデ。貧しい学生です」と偽名を告げて去っていく。ジルダは彼への恋心を夢見ごこちで語ったのち、自室へと戻っていく。「慕わしい人の名は」

夜中だというのに大勢でリゴレットの家に近づいてきたのは、ジルダをリゴレットの愛人と思い込み、彼女を誘拐してリゴレットに一泡吹かせてやろうとする廷臣たち。そこに「なにやら胸騒ぎがする」とリゴレットが戻ってくる。マルッロはすかさず「公爵のためにチェプラーノ伯爵夫人を誘拐しにきた。お前も手伝え」と彼を騙し、目隠しされたリゴレットを翻弄しておいて、ジルダを誘拐して去っていく。ひとり残されたリゴレットは、自分が娘の誘拐に手を貸してしまったことを知り、モンテローネの呪いの言葉を思い出す。

【第2幕】
翌朝。公爵の館では、ジルダが誘拐されたと聞いた公爵が、彼女の身を案じている。「頬に涙が」
そこにもたらされたのは、誘拐されたジルダがこの館にいるという知らせ。公爵は小躍りしてジルダを自室に呼び寄せさせる。「私を力強く愛が呼ぶ」

そこに憔悴しきったリゴレットがやってくる。彼は廷臣たちから何とかしてジルダの居場所を聞き出そうとするが、彼らはとぼけるばかり。公爵夫人の小姓が公爵の居室に入ろうとするのをマルッロが押しとどめる様子から、リゴレットは娘が公爵の部屋にいることを悟る。そして「お前たちが昨晩さらっていったのは、私の実の娘だ。返してくれ」と叫び、娘を返してくれと彼らに哀願する。「悪魔め、鬼め」

そこにジルダがあられもない姿で公爵の部屋から飛び出してくる。そして父の姿を見つけて「お父様とだけ話させて」と言う。父とふたりきりになったジルダはこれまでの経緯を父に話す。二重唱「日曜日ごとに教会で」娘の話を聞き終わったリゴレットは彼女に「すべてが終わったらこの街から出て行こう」と語る。
そこにモンテローネが「公爵への呪いも無駄であったか」と言いながら牢に引かれていく。それを耳にしたリゴレットは「ご老体、あなたの願いは私が叶えましょう」と言い、公爵への復讐を誓う。「そうだ、復讐だ」

【第3幕】
街はずれのミンチョ川の近く。壊れかけた居酒屋の外にジルダを連れたリゴレットが現れる。あのような目に遭ってもまだ公爵のことを信じようとする純情な娘にリゴレットはその居酒屋の中を覗かせる。

そこには殺し屋スパラフチーレと、その妹で美しいマッダレーナがいる。そこには公爵もいて「女心は風に舞う羽のように気まぐれなもの」と歌いながら、マッダレーナを熱心に口説いている。「女心の歌」
リゴレットはその様子を娘に見せて、公爵のことを諦めさせようとする。四重唱「美しき愛の娘よ」
涙を見せるジルダに、リゴレットは「男装してヴェローナに向かうのだ。私もあとから行くから」と語って彼女を見送る。

残ったリゴレットは、スパラフチーレを呼び出し、公爵を殺すことを依頼し「半分は前金で、残りは公爵の亡骸を確認してから支払う」と約束する。スパラフチーレに殺す相手の名を尋ねられたリゴレットは「やつの名は〈罪〉、わしの名は〈罰〉だ」と語り、夜半過ぎに戻ってくると約束して去っていく。

嵐になる。何も知らぬ公爵は酒に酔って上機嫌で居酒屋の二階で眠ってしまう。色男の公爵を殺すのが惜しくなったマッダレーナは、「この嵐の中で誰かが一夜の宿を求めてきたら、そいつを身代わりに殺せばいい」と兄に提案する。その会話を男装して戻ってきたジルダが聞いてしまう。ジルダは公爵の身代わりになるべく、居酒屋の扉を叩き、招き入れられたとたんに刺される。三重唱「あの若い男はアポロそっくりで」

嵐が過ぎ去って、約束の時刻になり、リゴレットが戻ってくる。スパラフチーレは袋詰めにされた死体を川に投げ込もうと提案するが、それを押しとどめたリゴレットは「あとは自分がやる」と言って、残金を渡す。スパラフチーレと妹は、素早く姿を消す。

「復讐がなされた!」と快哉を叫ぶリゴレットの耳に、公爵の歌が聴こえてくる。「ならばこの袋の中の死体は一体誰のものだ」と、リゴレットは恐る恐る袋を開く。そこに見つけたのは瀕死の愛娘ジルダの姿だった。
虫の息のジルダは「お父様ごめんなさい。天国からお母様と一緒に、お父様のことを見守っています」と語り、息絶える。二重唱「お父様、騙してごめんなさい。悪いのは私なのです」
リゴレットは娘の亡骸を抱きしめながらモンテローネの呪いの言葉を思い出し、「ああ、あの呪いだ!」と言いながら慟哭する。
(河野典子)

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