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作品について

ビゼー作曲「カルメン」

全4幕 字幕付き原語(フランス語)上演

イントロダクション

第12回を迎える〈川崎・しんゆり音楽祭(アルテリッカしんゆり)〉に、藤原歌劇団は2020/21シーズン開幕公演として、ビゼー作曲「カルメン」をお届けします。タイトルロールをミラノ在住のメッゾ・ソプラノ桜井万祐子(8/15&17)と、ここ数年で頭角を現してきた二瓶純子(8/16)が演じます。このオペラは、カルメンという女性をどう捉え、表現していくかにかかっています。ふたりのカルメンが、それぞれどんな女性像を作り上げるかにご注目ください。素朴で愛に一途な男ドン・ホセを藤原歌劇団の中心テノールのひとり、藤田卓也(8/15&17)と、2019年「椿姫」で瑞々しいアルフレードを聴かせた澤﨑一了(8/16)が演じます。闘牛士エスカミーリョには、今回が藤原本公演デビューとなる井出壮志朗(8/15&17)と「蝶々夫人」に続いて大役に抜擢の市川宥一郎(8/16)、そしてミカエラには、藤原歌劇団のプリマの一角に躍り出た伊藤晴(8/15&17)と「愛の妙薬」でジャンネッタを演じた石岡幸恵(8/16)をそれぞれ配しました。岩田達宗が2017年に作り上げたプロダクションを元に、今回限りの新しい舞台をお届けします。2019年4月に「蝶々夫人」を指揮して藤原歌劇団にデビューした鈴木恵里奈が、再びテアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラを指揮し、今回はフランス・オペラに果敢に挑戦します。

〜特別演出とは〜
今回は新型コロナウィルスの感染拡大のため4月に予定されていた本公演の延期を余儀なくされ、演出を一新した安全対策ガイドラインに即した特別演出でお送りします。本番の舞台上においても、飛沫対策など安全な舞台環境を整えて演奏・演技を行い、安心してご覧いただけるよう新しい“舞台のあり方”をご提案致します。

見どころ・聴きどころ

フランスの作曲家、ジョルジョ・ビゼー(1838〜75)を代表するオペラが、この「カルメン」。彼の他のオペラ「真珠採り」や「アルルの女」などとは比較にならないほど、世界中で親しまれている作品です。
まずは頻繁に独立して演奏される序曲。ここではこのオペラの主要なメロディが網羅されています。
主要キャストには、それぞれ有名なアリアがあります。カルメンの「ハバネラ」「セギディーリャ」「カルタの歌」をはじめ、エスカミーリョの「闘牛士の歌(クープレ)」、ドン・ホセの「花の歌」、ミカエラの「何を恐れることがありましょう」etc. 枚挙にいとまがありません。
また、幕切れでのカルメンとホセが対決する「あんたね、俺だ」の二重唱は、息を呑むような緊迫感をビゼーの音楽が見事に描き出しています。

あらすじ

【第1幕】
序曲に続き、お下げ髪の田舎娘ミカエラが、衛兵の詰所に伍長のドン・ホセを訪ねてくる。モラレスに「ホセは次の交代でやってくる」と聞かされたミカエラは、兵隊たちが「ここで待てばいい」と声をかけるのを断って、一旦その場から去る。
衛兵の交代の時刻になり、兵隊の真似をする子供達に先導されて、ホセのいる部隊がやってくる。モラレスから若い娘の来訪者の話を聞いたホセは「それは故郷ナバラからきたミカエラに違いない」と言う。
タバコ工場の昼休みを告げる鐘が鳴る。女工たちが工場から出てくるが、なかでも妖艶なロマの女カルメンに男たちが群がる。しかしホセは彼女に興味を示さない。カルメンは、「恋は思い通りになんてならないものよ」と言いながら、わざとホセに近付き、口にくわえていた花一輪を彼に投げつけて走り去る『ハバネラ』。ホセはその花を拾い上げ、大切そうに胸のポケットにしまう。
そこにミカエラが戻ってくる。ミカエラはホセの母親から預かってきた息子への手紙とお金を渡し、「これはお母様からのキス」と顔を真っ赤に染めながらホセの顔にキスをして去っていく。
工場の中で騒ぎが起きる。カルメンが他の女工と喧嘩をしたのだ。申し開きもせず鼻歌を歌うカルメンの態度に腹を立てたホセの上官スニガは、カルメンの護送をホセに命じる。カルメンは「逃がしてくれたら、セビリャの城壁近くにあるリーリャス・パスティアの店で待っているわ」と囁いてホセに縄を解かせ『セギディーリャ』、隙を突いてホセを突き飛ばし、走り去る。

【第2幕】
リーリャス・パスティアの居酒屋
1ヶ月ほどが過ぎたセビリャの城壁近くの酒場。ロマの女たちと、スニガやモラレスら士官たちが呑んで騒いでいる。タンバリンやカスタネットに合わせ、カルメンたちが歌い踊る『ジプシーの歌』
「そろそろ閉店の時間だ」と言って店主のリーリャス・パスティアが士官たちを急き立てようとするが、そこに花形闘牛士エスカミーリョが現れ、勇ましく闘牛の様子を語る『闘牛士の歌』のに、人々は喝采を送る。エスカミーリョが、カルメンに言い寄るが「今はそんな気分じゃないわ」とカルメンはすげなく断る。エスカミーリョはその答えに、その場はすっと引き、店を出ていく。カルメンに惹かれているスニガは、去り際に「1時間後に戻ってくる」と彼女に囁く。
店に残ったのはロマの女たちと店主、そしてダンカイロとレメンダード。彼らは密輸を商売にしている『いい商売を思いついた(5重唱)』
カルメンが「私は恋人を待っているから、一緒には出発できないわ」と言っていると、外からホセの歌声が聞こえてくる『アルカラの軽騎兵』。仲間たちは、「ホセを仲間に引き入れろ」とカルメンに言って姿を隠す。
昨日営倉から出たばかりで、一兵卒に格下げになったホセが現れる。カルメンは、彼を歓迎して歌い踊る。そこに帰営ラッパが聞こえてくる。帰ろうとするホセをカルメンがなじる。ホセは、ずっと持っていたカルメンが彼に投げた花を取り出して、彼女への愛を語る『花の歌』
そこにスニガが戻ってくる。ホセの姿を見つけ、彼を咎める。ホセがスニガに剣を抜こうとした瞬間、カルメンがダンカイロたちを呼び、スニガは彼らに押さえつけられて店から放り出される。もう中隊に戻れなくなったホセは、密輸団に加わることになる。

【第3幕】
セビリャ近郊の山の中
穏やかなメロディの間奏曲が終わると、そこでは密輸業者たちがひと休みしている。カルメンのホセへの愛は冷め始めている。フラスキータとメルセデスがやっていたカード占いにカルメンが加わる。彼女がめくるカードは、何度やっても〈死〉を予言する『カルタの歌』。 ミカエラが案内人に連れられてやってくる。彼女はホセに、彼の母親の病気が重く、息子に一目会いたがっていることを伝えにやってきたのだ『何を恐れることがありましょう』。そのとき、人の気配にホセが発砲する。その弾がカルメンを探しにやってきたエスカミーリョをかすめる。ホセとエスカミーリョが決闘を始めるが、カルメンとダンカイロが駆けつけて、ふたりを引き離す。エスカミーリョは、「皆さんをセビリャの闘牛に招待しましょう」と言って去っていく。 密輸団が出発しようとしたとき、レメンダードがミカエラを見つける。彼女から母が死の際にあることを聞かされたホセは、カルメンに後ろ髪を引かれる思いを残しつつ、ミカエラと山を下りていく。

【第4幕】
セビリャの闘牛場の前
第3幕から1ヶ月後。闘牛の開始を前に、人々で賑わう広場に華やかな衣装に身を包んだ闘牛士たちの行列がやってくる。エスカミーリョとカルメンは短いながらも恋人どうしの会話を交わし、闘牛士たちは闘牛場へと入っていく。フラスキータがカルメンに「ホセが群衆に紛れて、あんたの命を狙っているわ」と忠告するが、カルメンはそれを鼻で笑う。
群衆が闘牛場の中へと入っていき、広場が静かになった時、カルメンの前にホセが立ちはだかる。ホセはカルメンに、もう一度自分とやり直してほしいと懇願するが、カルメンは断る。闘牛場の中で、歓声が上がる。カルメンが闘牛場へ向かおうとすると、ホセは、ナイフを取り出して「闘牛場に行くというなら、ここでお前を殺す」と脅迫する。しかしカルメンは動じない。そしてホセからもらった指輪を外して「カルメンは自由に生まれ、自由に死ぬのよ」と叫び、その指輪を彼に投げつける。激昂したホセは、カルメンを刺し殺す『あんたね、俺だ(二重唱)』
そして「ああ、カルメン。俺の熱愛するカルメン・・・」と慟哭し、その場に立ち尽くす。

(河野典子)

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