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作品について

ヴェルディ作曲

オペラ全4幕 字幕付き原語(イタリア語)上演

愛憎と復讐の連鎖に散る三人の悲恋

グティエレスの戯曲「吟遊詩人」をもとに作曲されたドラマティックな音楽とストーリー

 

 

イントロダクション

藤原歌劇団が2022年の幕開けにお届けするのは、「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」「リゴレット」と並ぶヴェルディ中期の傑作「イル・トロヴァトーレ」です。 今回、タイトルロールとも言える吟遊詩人(トロヴァトーレ)のマンリーコを演じるのは、当団の看板テノールのふたり、笛田博昭と村上敏明を配しました。有名なアリア「見よ、恐ろしい炎を」をはじめ、ドラマティックな歌唱にご期待ください。その恋人レオノーラには、近年ヴェルディ作品に定評のある小林厚子と、情感溢れる歌唱で好評を得ている西本真子が務めます。恋敵ルーナ伯爵には、日本のイタリア・オペラを双肩に背負うふたりのバリトン須藤慎吾と上江隼人、復讐に燃えるロマのアズチェーナにはメッゾ・ソプラノの松原広美と桜井万祐子が担います。その他、藤原歌劇団を代表する歌手の競演は必見です。
演出は、イタリア・オペラの申し子であり日本を代表する演出家のひとり、粟國淳のニュープロダクションです。指揮は、当団の「カプレーティ家とモンテッキ家」「愛の妙薬」などベルカントオペラでも好評を得ている山下一史が、藤原歌劇団×ヴェルディ作品のコラボレーションを初めて牽引します。管弦楽はこれまで数々の名演を重ねている東京フィルハーモニー交響楽団、セントラル愛知交響楽団との共演でお贈りいたします。

見どころ・聴きどころ

冒頭の従者フェランドのソロは、恐ろしいドラマの発端を雄弁に語るもの。バスの深い響きが男声合唱と機敏に絡む。続いて、レオノーラの登場のアリアでは、恋を貫きたい女心が前半のカヴァティーナでしっとりと歌われ、後半のカバレッタでは、燃え上がる恋情が高まる鼓動とリンクして歌が華やかに展開する。また、アンヴィル・コーラス(鍛冶場の合唱)に続くアズチェーナの歌〈炎は燃えて〉と〈重い鎖に繋がれて〉では、ヴェルディが好んだきびきびしたリズムのもと、復讐心の塊となった女性の「負のエネルギー」を音楽が生々しく描写する。
一方、ルーナ伯爵の〈君が微笑み〉は、物語の烈しさにいっときの安らぎを与える優美なアリア。バリトンの濃密な声音が伸びやかに放たれる名曲である。また、マンリーコの人気のアリアでは、前半の〈ああ、あなたこそ私の恋人〉でのロマンチックな歌いぶりと、後半の〈観よ、恐ろしい炎を〉の猛々しさの対比をお楽しみに。また、レオノーラの耽美的なアリア〈恋はばら色の翼に乗って〉から伯爵との対決の二重唱へのドラマティックな展開、アズチェーナとマンリーコの〈我らの山へ〉における滋味豊かな親子の対話にも注目頂きたい。

あらすじ

【第1幕】
1409年。スペイン北東部の古都サラゴーサにある、アリアフェリアの宮殿。家臣たちが主君であるルーナ伯爵(Br)の噂話をしていると、従者フェランド(B)が、昔の物語として、先代の伯爵の惨い所業を語る。(アリア〈卑しき老婆が〉)。二人の息子のうち、赤子の弟がロマの女に呪いをかけられたと思い込んだ父伯爵は、その女を捕えて火刑にしたが、それを恨んだ女の娘が赤子を誘拐し行方知れずに。のちに火刑場から子供の骨が見つかったという顛末に、一同は恐ろしくなり、怯える。
一方、宮殿の庭では女官のレオノーラ(S)が侍女イネス(Ms)に自分の恋を告白する。(カヴァティーナ〈静かな夜〉)。正体不明の吟遊詩人(トロヴァトーレ)を愛する女主人のことをイネスは危ぶみ、宮殿に入る。入れ替わりにルーナ伯爵が現れ、レオノーラへの強い恋情を独白。すると奥から、トロヴァトーレの歌が響いてくる。その声を聴きつけたレオノーラが姿を見せるので、結果としてルーナとトロヴァトーレが鉢合わせに。トロヴァトーレは「我が名はマンリーコ!」と勇ましく名乗り、二人は互いに剣を抜く(三重唱〈嫉妬の思いで〉)。

【第2幕】
スペイン北部のビスカヤ湾に面した山近く。ロマの一団が金槌を振り上げながら歌い、仕事に精を出す(〈アンヴィル・コーラス(鍛冶場の合唱)〉)。アズチェーナ(Ms)が姿を見せ、母親が先代の伯爵に火あぶりにされたことを語る。(カンツォーネ〈炎は燃えて〉)。マンリーコが母のアズチェーナにもっと詳しい話をと望むと、彼女は応えて歌い始め(ラッコント〈重い鎖に繋がれて〉)、「伯爵の子を火に投げ込んだつもりが、実は自分の息子を投げ込んでしまった」と叫ぶ。その言葉にマンリーコは驚くが、アズチェーナはその場を取り繕い、「復讐せよ」と息子に命じる。そこに使者が現れ、レオノーラが修道院入りするとの知らせを持ってくる。マンリーコは彼女を奪い取るべく行動を起こす。
カステリャール(サラゴーサ近郊の要塞地)近くの修道院。夜。ルーナが、レオノーラを攫うべく待ち構え、アリア〈君が微笑み〉を歌う。礼拝堂の中で尼僧たちが合唱する中、レオノーラがイネスを連れて現れる。ルーナが彼女の前に飛び出した途端、マンリーコも姿を見せる。壮大なアンサンブルでマンリーコはレオノーラを連れ去ることに成功、ルーナは怒りに燃える。

【第3幕】
ルーナ伯爵の陣営。兵士たちが、フェランドとともに、カステリャールの要塞を攻略しようと歌う。フェランドがルーナに、ロマの女が陣営のまわりをうろついていたので捕らえたと報告。アズチェーナがひったてられてくる。ルーナが彼女を尋問すると、フェランドが、主人の弟を誘拐した張本人が目の前の女だと気づく。全員が彼女を責め立てるなか、アズチェーナは息子の名を呼ぶ。ルーナはそれを聞いて驚き、彼女を囮にしてマンリーコを捕らえようと意気込む(三重唱〈ああ、この恥知らずな奴〉)。
それを知らないマンリーコは、レオノーラと共に、礼拝堂で結婚式を挙げる用意をする。マンリーコはカヴァティーナ〈ああ、あなたこそ私の恋人〉を歌い、レオノーラに改めて愛を捧げる。そこに部下のルイス(T)が現れ、アズチェーナが捕らわれたと報告。マンリーコは、勇猛なカバレッタ〈恐ろしい炎〉を歌い、レオノーラを残したまま、母を救うために飛び出してゆく。

【第4幕】
アリアフェリアの宮殿内。ルイスがレオノーラを連れてくる。レオノーラは独りになり、恋人を救う決意を歌う(カヴァティーナ〈恋はばら色の翼に乗って〉)。鐘が鳴り、囚われのマンリーコの声が聞こえる。レオノーラは心を決め、現れたルーナの前に進み出て、マンリーコの命乞いをする(二重唱〈あなたの眼の前に〉)。レオノーラが「わが身と引き換えにしてもマンリーコを救って」と訴えると、ルーナは了解。しかし、その隙を見て、レオノーラは毒薬を口に含む。
牢獄ではマンリーコとアズチェーナが一室に閉じ込められており、アズチェーナは昔の酷い記憶にいまも苛まれるが、そのうちに平常心を取り戻し、息子のマンリーコとしみじみと語り合う(二重唱〈我らの山へ〉)。歌の最後に母親は眠り込んでしまう。するとレオノーラが姿を見せ、逃げるようにとマンリーコに告げる。彼はレオノーラの行動を疑い、ルーナに愛を売ったのではないかと怒る。毒のせいで弱るレオノーラは、彼の前で倒れ息絶える。現れたルーナはそれに激怒し、マンリーコを処刑。目を覚ましたアズチェーナが止めようとするが間に合わない。彼女はルーナに「彼がおまえの弟だ」と告白、「母さん、仇を打ちましたよ!」と絶叫。ルーナは恐怖にかられる。

(岸 純信)

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