作品について

グノー作曲
オペラ全5幕 字幕付き原語(フランス語)上演

見どころ・聴きどころ

シェイクスピアの名場面を多く盛り込んだ上で、「それまでに無かった耽美さ」を作曲家グノーが徹底的に追究したオペラ。若い男女の熱愛ぶりが甘美なメロディでたっぷり描かれる。第1幕ではまず、メルキューシオの〈マブの女王のバラード〉がフランス語の軽さを活かして颯爽と歌われ、人気の名曲、ジュリエットのワルツ〈私は夢に生きたい〉も登場。こちらは、初演者のソプラノ、ミオラン=カルヴァロがグノーに詰め寄って書かせた「追加の名曲」であり、終盤での下降音型の烈しい繰り返しが、熱い乙女心を描き上げる。
第2幕ではロメオのカヴァティーヌ〈太陽よ昇れ!〉が聞きもの。最後に歌われる高音が、青年の情熱の量を爆発的な勢いのもとに表現する。また、幕切れまで続く恋の二重唱は、感傷的な曲調で聴き手を堪能させる名場面。
第3幕第1場では、恋人たちが神父の前で結婚し、乳母も加わる四重唱において、同型のフレーズを一音ずつ高く繰り返すという作曲家得意の手法が鮮烈な効果をもたらす。続く第2場では小姓の軽妙なシャンソン〈白いキジバトよ〉が息抜きの洒落た一曲となるほか、公爵が下した追放処分を受けて、ロメオから歌い出す壮大なコンチェルタート〈ああ悲しみの日よ〉も大いなる聴きどころ。初演前にカットされたシーンだが、1888年のパリ・オペラ座公演で復活し、今では人気の名場面に。各人の悲痛な胸の内が切々と歌われる。
次の第4幕では、チェロの詩的なテーマに導かれて、長大な愛の二重唱〈私は貴方を赦すわ〉が歌われ、秘密の初夜を過ごして満ち足りた二人の想いが存分に表現される。続いて、神父から仮死状態になる薬を渡されたジュリエットが、決意のエール〈愛よ、私の勇気を奮い立たせて〉を歌ってそれを一気に飲み干すくだりも、彼女の「勁い心根」の表れとして客席を掴むことだろう。
そして第5幕では、コルネットやトロンボーンの切なさが印象的な〈間奏曲〉と木管の柔らかな響きが特徴的な〈ジュリエットの夢〉が、グノー流のオーケストレーションの妙を強く打ち出し、ロメオの激情の独白に続いて、原作とは違って二人が共に息絶える劇的な二重唱〈君自身を労わりたまえ〉が客席の涙を誘い、同一音型を繰り返す後奏部が二人の物語の「永遠性」を力強く象徴する。

あらすじ

第1幕

14世紀のヴェローナ。モンタギュー家の青年ロメオは敵方キャピュレット家の仮面舞踏会に潜り込み、美しい乙女ジュリエットと互いにひと目惚れ。しかし、そこにキャピュレット家のティボーが現れるので、ロメオはジュリエットがキャピュレットの娘と気付き、ジュリエットも青年の正体に気づく。ロメオの親友メルキューショが諍いを避けるべくロメオたちを引っ張ってゆき、宴会の人々は楽しく合唱する。

第2幕

キャピュレット家の庭園に忍び込んだロメオは、ジュリエットを思って愛の歌を歌う。すると、ジュリエットがバルコニーに現れ、恋心を独白。ロメオはそれを聞いて姿を見せ、二人で美しい愛の二重唱を歌う。

第3幕

第1場:神父ロランスは、ロメオの恋の悩みを知る。そこにジュリエットが乳母ジェルトリュードを伴って現れる。恋人たちは「結婚したい」と神父に頼み、神父の側も、家同士の諍いが終わることを願って二人を結婚させる。
第2場:ロメオの小姓ステファノが揶揄いの歌をキャピュレットの家の前で歌い、それが新たな紛争を引き起こす。キャピュレットのティボーがモンタギューのメルキューシオを殺害。報復でロメオがティボーを斃す。公爵の命でロメオは追放になる。

第4幕

第1場:ジュリエットは従兄の命を奪ったロメオを赦し、二人は愛の時を過ごす。しかし、父親にパリスとの結婚を強要されたジュリエットは、ロランス神父から貰った薬を飲んで仮死状態になり、墓からロメオと逃亡しようと決意する。
第2場:パリスとの婚礼が始まる。人々の祝福の歌声が響きわたるなか、薬が効いてきたジュリエットは昏倒し、人々は彼女が死んだと思い込む。

第5幕

霊廟に横たわる新妻の前で、真相を知らないロメオは毒を呑む。するとジュリエットが目覚めるが、ロメオは虫の息。彼女は短剣で胸を刺し、夫と共にこと切れる。

 

(岸 純信)

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