ロッシーニの魔法にかかった、灰かぶり娘のシンデレラストーリー
2024年4月27日(土)・28日(日)14:00 開演(13:00 開場)テアトロ・ジーリオ・ショウワにて、藤原歌劇団創立90周年記念公演のオープニングに、G.ロッシーニ作曲「ラ・チェネレントラ」を公演します👑
ペローの童話、シンデレラの絵本から“再び”登場人物たちが飛び出してきた!
オペラ・ブッファの巨匠ロッシーニの傑作「ラ・チェネレントラ」待望の再演!!
キャストコメント第16弾は、演出家のフランチェスコ・ベッロットからのメッセージをご紹介します✨
Q 演出家から見るロッシーニオペラの面白さとは
ロッシーニはイタリア劇場音楽界の偉大な作曲家の1人であり、特に傑作オペラ・ブッファの作家として知られています。オペラ・セリアでも素晴らしい作品を残しましたが、最初に国際的な大成功を収めた作品が「セビリャの理髪師」で、それに続く大成功となったのが「ラ・チェネレントラ」であり、後に世界的なオペラ・ブッファとなります。
ロッシーニ作品の喜劇性は、本質的にその音楽を通じて登場人物を描く手腕に根差しています。彼は一定の手法を編み出し、例えばドン・ラミーロのように実直なスタイルで歌う役もいれば、一方で典型的に滑稽なスタイルで歌う役、例えば二人の異母姉妹の父親などは、イタリアン・ブッフォ役の典型です。
ロッシーニと同時代の作曲家にベートーヴェンがいますが、彼の音楽が既にロマン主義へと傾き始めていたことを思い起こしてみてください。彼の交響曲における全ての楽器やその編成は巨大化の道を辿っていました。ロッシーニも作品中のアリアやイタリア的様式の上では同じことを行っており、その感情表現は全般において誇張して描かれているので、たくさんの音に溢れんばかりの物語が絡んでいて、示唆に富んでいます。
そのため、ロッシーニ作品を舞台に乗せることは、まさにこの天才が楽譜に込めたドラマツルギーの極意を見い出すのに、少なくとも私たちをそうするように駆り立てる壮大なチャレンジです。
Q 再演に向けての想いとご来場くださる皆様にメッセージをお願いします!
数年前にこの演出で公演した時に私が意図していたのは、まさにおとぎ話や寓話の佇まいを思い起こさせることであり、邪心や心理的駆け引きなど無しに考え抜かれた雰囲気を舞台に蘇らせることでした。
あの頃は、それが私には正しく思えました。この音楽の内に感じ取れる魔法のような力や登場人物たちの無邪気さに加え、こうした筋の運び方が、世界で最も有名な童話の一つであるペローの「サンドリヨン」、イタリア語の「チェネレントラ」に源を発していたからです。あれから何年かが経ち、この作品が “そういった趣で” 舞台化される理由はさらに高まったと私には思えます。
当時、実質的に世界は平和な時代にありました。今、ヨーロッパでは2つの恐るべき戦争、ウクライナ紛争と中東での争乱を間近に抱えています。そして、歌劇場では、こういった現実の出来事が益々舞台上にも現れてきています。それが間違っているとは言いませんが、もともとオペラというのは、イタリアの作品やオペラが大成功を収めていたのはそれらが空想上の出来事、つまり現実から乖離した物語を語っていたからこそであって、舞台内に現実味など持込みはしなかったのです。今ここで、オペラはおとぎ話であって、ファンタジーであり得るという事実を前に現在、演出がこういったアプローチに傾くのにはそれなりの理由があります。つまり、これほど絶望感や痛ましい出来事に満ちた希望なき世界では、その現実を舞台に取り込もうとするのです。
その一方で、私たちはイタリア・オペラがファンタジーの世界や憧れの世界、希望の世界を物語ろうという発想から誕生したことを良くわかっています。最初のオペラ、最古の作品の一つはオルフェウスの神話劇でした。今ここで我々が物語るのはシンデレラの童話です。オペラはおとぎ話でありファンタジーであって、美しく、そして何よりも希望であり得ることを、今こそさらに唱えていくことが私たちには必要だと思います。
2018年の公演にもおいでくださった方と、今回初めてご覧になる方がいると思います。初めてこの演目をご覧になるお客様には「オペラへようこそ、お楽しみください!」と申し上げます。
私たちは、あるオペラのストーリーを、できる限り自然な形で明瞭にお伝えしたいと考えました。私は、少なくとも演出家としては、物語のナレーターであり語り手だと思っています。ここで私たちが話して聞かせるのは一つの物語であり、おとぎ話ですので、私たちは、そのお話をできるだけ分かりやすい手法で見てもらえるように努めました。例えば、私たちがW.ディズニーのアニメとなった話で知っているようなものまで加え、妖精やネズミたち、あらゆる魔術的な要素ですが、これらは本作品の作者であるロッシーニとフェッレッティによって省かれてしまったものでした。1817年当時のローマでは、魔術的な要素は検閲によって禁止されていたためで、超自然的なものの存在は認められていなかったのです。私たちは、なによりも観客の皆さんに理解してもらえるストーリーを描きたかったので、おとぎ話の要素を再び取り入れたのですが、それはオペラ台本とこの童話に関する既知の事がらとの狭間を行き来しながらの作業でした。そのため、心配することなく劇場に足をお運びください。チェネレントラ、サンドリヨンにお会いいただけます。争いや流血や惨劇といった現実抜きで、本物のおとぎ話を観ていただけます。
一方、再びこの演目を観にきてくださる方々に、先ずは「再びおいで下さり、ありがとう」と申し上げます。加えてお伝えしたいのは、舞台とは生き物ですから変化していきます。2018年の公演に比べると、演奏者も何人かは全く変わっていますし、登場人物同士の関係にも多少は変化が生じています。細かいニュアンスについては変更も多く、過去のバージョンと比較もしてみていただけます。その “手法” を今は明かしませんが、この公演の持つメッセージをより明確にするように努めました。そのメッセージとは、この物語の重要性であり、シンデレラの童話に付随し何世紀にもわたって記され語られてきた事柄がどれだけ価値あるものなのかということです。ここで、“どのように” とは述べませんが、扉が開かれ物語が語られるこの本の基本的なメッセージは、数年前のバージョンに比べると、今回さらに明瞭になっていると私は信じています。
稽古の様子も少しだけ覗けるインタビュー動画もぜひお楽しみください🎵
公演情報
藤原歌劇団創立90周年記念チケット
S席ペアチケット:¥30,000(S席¥15,000×2枚)
- 有料プログラム(販売価格¥1,000)2冊付き
- サイン入り公演写真2枚付き
※日本オペラチケットチケットセンターへのお電話へお申込みの方限定特典となります。
※サイン入り公演写真は、全ての出演者のご用意はございませんので予めご了承ください。種類は公演当日、販売所にてご確認ください。
チケット情報
S席 15,000
A席 12,000
B席 8,000
C席 4,000
指揮 鈴木恵里奈
演出 フランチェスコ・ベッロット
4/27 4/28
アンジェリーナ 但馬由香 山下裕賀
ドン・ラミーロ 小堀勇介 荏原孝弥
ドン・マニーフィコ 押川浩士 坂本伸司
ダンディーニ 岡 昭宏 和下田大典
クロリンダ 楠野麻衣 米田七海
ティーズべ 米谷朋子 髙橋未来子
アリドーロ 久保田真澄 東原貞彦
合唱 藤原歌劇団合唱部
管弦楽 テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
【主催】公益財団法人日本オペラ振興会
【共催】川﨑・しんゆり芸術祭実行委員会、川崎市、川崎市教育委員会
【協力】小田急電鉄株式会社
【後援】「音楽のまち・かわさき」推進協議会、NOP法人しんゆり・芸術のまちづくり、「映像のまち・かわさき」推進フォーラム