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【新人育成オペラアンサンブル公演】「La Rondine つばめ」演出 三浦安浩先生へのインタビュー

オペラ歌手育成部
第42期新人育成オペラアンサンブル公演開幕まで、あと一ヶ月。
今回は3月18日(土)公演 「La Rondine つばめ」の演出 三浦安浩先生へのインタビューをお届け致します。

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全席指定 2,500円/後日配信 3,000円
https://teket.jp/2148/16561

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――今回の演目に「つばめ」を選ばれた理由や狙いを教えてください
この「つばめ」はもともとオペレッタとして書こうとしていたという事もあり、プッチーニの中でも異色な作品なんです。
彼女(研究生)たちは真面目なんだけれども華やかさに欠けるところがあって、各々の『色』や『華』を出すことのできる作品にしたいと思い、ダンスなどオペレッタ的な要素もある「つばめ」を選びました。

――助演にはベテラン歌手に加え、昨年・一昨年に育成部を修了したばかりの新人歌手*も迎えました
助演の皆さんにはとても感謝しています。
今回の出演者はコロナ禍の中でやってきた子たちで一緒に食事することもないし、初めはソーシャルディスタンスに配慮し接触を避けた演出だったので、とても不幸なことにどうしても他の人から影響されるということが少ないという事がありました。
こういう時代にあっても皆に勇気や喜びを与えられるものを作るというのが我々の使命なので、人生の中の大事な時にそういう経験を得られないで研究生の勉強を終えてしまうという事は彼女たちがこの業界で生きて行く時にはデメリットになるのではないかと思うんですね。そこで今回は助演の男性たちの力を借りて、彼女たちの女性としての魅力というものを引き出したいなと思っています。
また彼らも同じ思いを持っていて、こういう機会を得られてまたオペラを一緒にできることがとても嬉しいと言ってくれているので、今回はこのような形にできて本当によかったと思っています。

*育成部修了時に成績優秀者は日本オペラ振興会所属歌手に推薦される。

――演出テーマ『黄金の夢、そしてあきらめ』について
プッチーニがこのオペラを書いた時期を生きた女性にココ・シャネル*がいます。私生子で施設に預けられて育ったのち、パトロンのような人を見つけて自分の店を持ち段々と有名になっていった人です。
その彼女がデザインの中でやっていたのが、『束縛された女性が解放されていく』という事で、これは現代の女性向けデザインの元となっていると思うんですね。
それでプッチーニが「つばめ」の中でやろうとしたことも、そういうことなんじゃないかと。この作品は明らかにヴェルディの「ラ・トラヴィアータ」をベースにしオマージュに満ちている作品なんですが、ちょっと違うのは「トラヴィアータ」のヴィオレッタが誤解を受けながら死んでいきます。対して「つばめ」のマグダはヴィオレッタと同じtraviata(道を踏み外した女性)の娼婦でありながら、自らの身分や名前を偽らずに生きていくことを選んで歩み始める、という物語なのかもしれないと。
しっかりとした気持ちを持って自分自身に正直に生きていこう、誰かに押し付けられたからということではなくて、これは自分が選んだ道なんだという風に生きていくということ。これが『黄金の夢』なんですね。お金持ちから支援されてということではなくて、自分の気持ちで生きていくという事を今回の演出では描こうと思っています。

*1883年-1971年、フランスのファッションデザイナーで、世界有数のファッションブランド・シャネルの創設者。

――もう一つのテーマ『贖罪』について
プッチーニが「蝶々夫人」を書いた後ドーリア事件*があり、自責の念から数年間オペラを書けなかった時期がありました。この時期を経て生まれた「西部の娘」・「つばめ」・「三部作」・「トゥーランドット」の4作品はすべて単に人が死ぬということではなく、自らの罪と向かい合うという『贖罪』をテーマにしているんですよね。「トゥーランドット」の未完部分でも本当はそれを描きたかったんだと思います。
今回の演出ではランバルド(マグダのパトロン)を作曲当時の、プルニエ(アーティスト)を若い頃のプッチーニのイメージで作っていこうと思っています。

*1909年、プッチーニの小間使いだったドーリア・マンフレーディが、彼の妻エルヴィーラから不倫の嫌疑をかけられ苛烈ないじめを受け錯乱し服毒自殺した事件。検死の結果彼女は処女で、濡れ衣であったことが分かった。

――育成部の第15期生を修了した先輩でもあられる三浦先生から、今回の出演者へ期待したいことをお聞かせ下さい
私の代の修了公演はヴォルフ・フェラーリの「イル・カンピエッロ」でした。その時の私は無知でこのオペラを全然知らなかったし、与えられたのがオバサンの役だったので、当時先生に抗議した思い出があります。でも勉強してみるとそれまで持っていたオペラへのこだわりみたいなものがスッと消えて、この作品の舞台である広場に自分自身がなじんでいくのがとても良く分かったんです。

第15期修了公演「イル・カンピエッロ」よりドナ・カーテ役

第15期修了公演「イル・カンピエッロ」よりドナ・カーテ役


だから僕はそういう舞台を提供しなきゃいけない、自分が人生の中でされて嬉しかったことは自分もしてあげたいと思うんですよね。もちろん育てるために厳しいことはいいますが、ただ突き放すんじゃなくて研究生たちへの愛のある舞台を作りたいと思っています。
研究生たちにとにかく言いたいのは、役をもらうというのは本当に凄いことで、素晴らしいということです。実際世の中に出てみればそんなに簡単に声を掛けられることはないんだとすぐに気づくと思います。そういう現実に直面したときに、役がもらえるよう頑張ろうというエネルギーになるような体験をこの舞台でして欲しいですね。

――「つばめ」をご覧いただくお客様へ向けて、メッセージをお願いします
私が演出した2020年3月のピッチンニ「花ことば」は、コロナ禍によって無観客開催となり本当に悲しかったです。我々の業界は見てもらうことが一番大事で、お客様なしでやることはありえないんですね。「お客がいる」というある種の異世界で、歌手たちが自分を魅せているという関係性を楽しんでいただきたいです。そして、今回出演している研究生と助演の歌手たちの名前を覚えて帰って頂いて、彼らが出演する舞台を是非応援に行ってもらいたいですね。

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三浦 安浩 Yasuhiro Miura
国立音楽大学声楽科卒業、メリーランド大学大学院修了。テノール歌手として活躍後、2002年、演出に転向、2006年新国立劇場小劇場「セルセ」で本格的デビュー、斬新な演出で一躍注目を集める。
主な演出作品に、日生劇場開場50周年記念公演「フィデリオ」、新日本フィル「レオノーレ(日本初演)」「火刑台上のジャンヌ・ダルク」(三菱信託奨励賞受賞)、東京芸術劇場シアターオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」、びわ湖ホール「ラインの黄金」、新国立劇場子供のためのオペラ劇場「パルジファルと不思議な聖杯」、新国立劇場オペラ研修所「カルディヤック(日本初演)」、東京文化会館「ヘンゼルとグレーテル」、北とぴあ国際音楽祭「月の世界」(故実相寺昭雄氏との共同演出)、日本オペラ協会「袈裟と盛遠」、北海道二期会「ラ・ボエーム」、名古屋二期会「こうもり」、群馬オペラ協会湖上オペラ「白馬亭にて」、静岡県民オペラ「イリス」、広島シティオペラ「道化師」「ジャンニ・スキッキ」、首都オペラ「フランチェスカ・ダ・リミニ(日本初演)」(三菱信託奨励賞受賞)、ANCORA「Hoffmann2019」、文化庁巡回公演「てかがみ」「おこんじょうるり」、石川県・金沢市共催「禅~ZEN」(金沢及び高崎公演)などがあり、常に独自の視点から娯楽性あふれる舞台を作り出し多くの支持を得ている。
また、ジョナサン・ミラー、デイヴィッド・パウントニー、ダミアーノ・ミキエレット、ヤニス・コッコス、栗山昌良、故鈴木敬介をはじめとした国内外の演出家のアシスタントとして活躍し、特に新国立劇場では数々の舞台の再演演出を務めてきた。
海外に於いても、横浜=ハノイ・パートナーシップ公演、ベトナム市立劇場に於ける「竹取物語(沼尻竜典作曲)」の演出を務めた他、イタリア・プッチーニ・フェスティヴァル、ポルトガル・サン・カルロ王立劇場、フランス・ラン劇場などに参加した。
今後も、2023年2月に札幌文化芸術劇場ヒタルのオペラ・プロジェクト第1弾として「フィガロの結婚」を演出するなど活躍の場をさらに広げている。
新国立劇場オペラ劇場演出チーフ、新国立劇場オペラ研修所主任講師を経て、現在桐朋学園大学大学院非常勤講師。日本オペラ振興会オペラ歌手育成部講師。静岡国際オペラコンクール企画運営委員及び審査委員。ソウル国際音楽コンクール審査員。日本オペラ協会会員。藤原歌劇団団員。日本演奏連盟会員。ANCORA主宰。
2020年以降のコロナ禍においても精力的に活動を続け、特に、YouTube「燃えよオペラ!」はわかりやすいトークでオペラ、映画、小説からサッカーまでを網羅し、ファンも多い。

三浦先生のYoutubeチャンネルはこちら→https://www.youtube.com/@ankoumiura1

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