7月末からお送りしてまいりました舞台裏レポート、本日は特別企画としまして、音楽ライター、小田島久恵さんによる稽古場取材のレポートをお届けします。国内外問わず、多くのオペラ作品を観ている小田島さんの目に「カプレ―ティ家とモンテッキ家」の稽古はどのように映ったのでしょうか。
9月10日に初日を迎える藤原歌劇団『カプレーティ家とモンテッキ家』の通し稽古を見学した(9/11キャスト)。この日(8/25)の稽古場にはメインキャストの歌手たちと男声合唱がスタンバイしており、ロメオ(鳥木弥生)とジュリエッタ(光岡暁恵)以外は全員男性。わずかに登場する女声合唱パートは、今回は舞台上では歌わない演出だという。初めてこの稽古を見た筆者にとっての第一印象は「雄々しい…!」ということだった。
ベルカントの合唱はエレガント、という先入観があったが、カプレーティ家の家臣たちの歌声は実にワイルドで勇壮。飛び出してくるような迫力があり、一人一人の声のキャラクターも濃い。稽古場の四方の壁が勇ましい響きに震えているのを感じた。その中でロメオの鳥木さんの発声は、格別にノーブルで勇敢に響き渡っていた。男声の渦の中で聴くと、ロメオのメッゾ・ソプラノの声は別次元の光り輝く声に聴こえる。敵陣の中に一人潜り込んでいるという設定が、決意を込めた歌唱からもリアルに伝わってくるのだ。長身の鳥木さんは立ち姿がゴージャスで、剣さばきも様になっているので、衣裳を着けたらさらに舞台映えするだろう。ジュリエッタの父カペッリオ・豊島雄一さん、恋敵テバルド・所谷直生さん、医師ロレンツォ・坂本伸司さんもドラマティックな歌唱と演技で、ベルカントの様式美を飛び越えてリアリズム的なドラマを感じる瞬間が多かった。
(文:小田島久恵(音楽ライター))
稽古場の臨場感、作品の素晴らしさがひしひしと伝わってきますね!明日もレポートの後半をお届けします!どうぞお楽しみに!
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