本日は、7月2日公演でタイトルロールを務めます折江忠道からのメッセージをご紹介します。
「目下、藤原歌劇団では「ドン・パスクワーレ」の稽古に余念がありません。
イタリアから演出家のベッロット氏が早々と6月1日に来日、指揮者の菊池彦典氏も5月末には来京といった状態で、皆さんのやる気満々、情熱沸騰の意気込み満載での稽古開始となりました。
日本では中々上演の機会に恵まれないこのオペラは、やはり観て聴いて徹底的に愉快で楽しい作品ですが、演じる側にとっては想像を絶する難しさが際立ちます。
マシンガンの弾丸のように目にも留まらぬ速さで過ぎ去って行くイタリア語の流れ、何の気なしに交わされるイタリア人ならではの会話の数々、日常的なちょっとした粋な仕草等々、どれ一つ欠けてもこのオペラは成り立ちません。まさにイタリアそのものなのです。
出演者の皆さんはそれぞれイタリア留学の経験がある方ばかりなのに、単なる日常会話とはまるで違う世界が繰り広げられます。何しろ考えながら言葉を選ぶ時間が皆無なのですから想像するだに恐ろしい展開となります。
当然の事ながら演出家は生粋のイタリア人ですから、言葉に対する反応は速いのです。相手役のセリフが終わるか終わらないかの間一髪の瞬間に疾風の如くセリフが発せられ、そのセリフと同時に舞台を縦横無尽に動き回るというのですから、連日の稽古では笑いが絶えません。
そもそも完璧という舞台は存在し得ませんが、それにしても失敗をしても尚、稽古中にこれ程の爆笑と絶賛を受ける機会はそうそう有るものではありません。
このオペラは本番におけるお客様の笑い親しむ姿を念頭に書かれた事は明らかですが、稽古中すでに喜劇の神髄たる笑いと喜びを演者たる我々に教えているように思えて仕方ありません。
やはりオペラ「ドン・パスクワーレ」はドニゼッティのコミックオペラの傑作と称される所以がここにあります。
最後に、今回が藤原歌劇団デビューとなるノリーナ役の坂口裕子、エルネスト役の許昌は稽古開始から暗譜はほぼ完璧の状態で臨んでいて、本番への強い意気込みを感じさせます。
ここで裏話を一つ……、セリフの応酬に四苦八苦の慌てぶりを呈しているのは、実は何を隠そう、かく言う私自身なのであります。恥ずかしながら、いつまで経っても機敏に反応しない頭と身体の持ち主である私に対して、参加者皆さんから温かい応援、激励を受けながらの稽古進行となっています。
やはり藤原歌劇団の本番は稽古の時から皆さん熱く、思いやりに満ち、厳しい追求心をもって進行している事をしみじみと実感し、大きな喜びと深い感謝の念に心満たされ毎日の稽古が進んでいます。
感謝」
4月から藤原歌劇団総監督の任にあたっている折江忠道。このメッセージで稽古場の雰囲気を余すところなく伝えてくれています。
楽しくも緊張感のある稽古の先に、皆さまにお見せする舞台があります!その成果、是非、劇場でご覧ください。
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